運動とその他の疾病

 加齢に伴って骨は粗鬆(そしょう:密度が減る)化しますが、運動不足はこの傾向を加速します。これが進むと骨が破壊され、骨からカルシウムやリンが脱落し、骨量や骨密度が減少し、骨折しやすくなります。このような病気を骨粗鬆症と呼び、最近よく耳にする病名です。日常的に運動することによって加齢に伴う骨の粗鬆化をかなり予防することができます。そのためには強い運動である必要はなく、軽い、しかも立位の運動が必要とされています。
 また、運動は要介護に至るリスクとなる、フレイル(虚弱)やサルコペニア(加齢性筋肉減少症)を予防する効果も期待されます。どんなにトレーニングされた宇宙飛行士であっても長期の無重力飛行から地球に帰還すると、筋力がおとろえるという現象が知られていますが、これは運動という場合重力に抗した日常生活上の起居動作までもが筋肉の維持に重要だということを示しています。
 さらに、身体活動ががんの発生を予防したり、がんの発育を抑制したりする可能性があることが最近注目されています。特に結腸がんにおいてその傾向が強いようです。そのしくみについてはまだわかりませんが、人間にとって運動というのはあらゆる疾病の予防に関連しているということかもしれません。

(執筆・監修:自治医科大学附属さいたま医療センター 総合医学第1講座 主任教授/循環器内科 教授 藤田 英雄)