運動と肥満 家庭の医学

 病気のリスクになるほどに脂質が体内に蓄積した状態を肥満と呼びます。肥満は摂取エネルギーと消費エネルギーのバランスで生じますから、消費エネルギーより多くのエネルギーを摂取したり、摂取エネルギーが多くなくても運動が不足すれば肥満を生じます。
 肥満化傾向には個人差があり、摂取エネルギーや消費エネルギーが同じでも肥満になりやすい人と、なりにくい人がいるのは事実です。肥満はそれ自体の弊害もありますが、多くの場合、糖尿病高血圧脂質異常症動脈硬化、あるいは腰痛や脂肪肝など多くの疾患のリスクとなり、このほうがより深刻な弊害をもたらします。わが国ではもともと諸外国にくらべて高度の肥満者は少ないのですが、中高年男性において年々肥満が増加していることが問題です。肥満治療の原則は運動と節食です。減量という点からは節食のほうが効率的のようにみえますが、運動には減量以外のいろいろな効用があることから、総合的にみれば運動のほうがより優れた肥満対策といえます。
 肥満対策としての運動には、運動の強さよりも総消費エネルギーのほうが重要であり、このために多くのエネルギーを消費するような比較的軽くて長時間続く運動を、回数多くおこないます。

【参照】内分泌・代謝異常の病気:肥満

(執筆・監修:自治医科大学附属さいたま医療センター 総合医学第1講座 主任教授/循環器内科 教授 藤田 英雄)