運動と動脈硬化 家庭の医学

 動脈硬化は加齢とともに進展する、もっとも普遍的な病気であると同時に、非常に恐ろしい病気です。心筋梗塞狭心症などの虚血性心疾患脳梗塞脳出血などの脳血管障害などは、いずれも動脈硬化が原因で起こります。これらの動脈硬化関連疾患による死亡は、1位のがんに迫る勢いです(2位:心疾患、4位:脳血管疾患)。
 動脈硬化には、主として動脈のもっとも内側の層(内膜)に特徴的にみられるアテローム硬化(粥状〈じゅくじょう〉硬化)、中膜に起こる中膜の硬化、そして細い動脈に起こる細動脈硬化などに分類されます。日常的な運動には、これらの動脈硬化に対して予防的な効果、あるいは治療的な効果があります。
 日ごろ運動している人はアテローム硬化の発生が少なく、またいったん発生したアテローム硬化が運動によって退縮することも報告されています。そのしくみとして、運動によって中性脂肪やLDLコレステロール(悪玉コレステロール)が減少し、HDLコレステロール(善玉コレステロール)が増加するなど、脂質代謝が改善することが最大の要因として考えられています。そのほかに、動脈の内膜への脂質の取り込みが抑制されるといったしくみもあるようです。
 また、運動は中膜の硬化に対しても効果があるとされており、運動によって動脈の伸展性や強靱性が高まり、血管を若返らせるとされています。

(執筆・監修:自治医科大学附属さいたま医療センター 総合医学第1講座 主任教授/循環器内科 教授 藤田 英雄)