円形脱毛症(AA)は、さまざまな自己免疫疾患や精神疾患と関連することが知られているが、AAを有する母親から生まれた児への長期的な影響は明らかでない。韓国・Yonsei University Wonju College of MedicineのJu Yeong Lee氏らは、同国の医療保険および出生登録データベースを用いた後ろ向き出生コホート研究を行い、母親のAAが児の疾患リスクに及ぼす影響を検討。その結果、AAを有する母親から出生した児はそうでない母親から出生した児と比べ、自己免疫・炎症性疾患、アレルギー性疾患、甲状腺疾患、精神疾患を発症するリスクが有意に高かったと JAMA Dermatol2023年5月24日オンライン版)に発表した。

AAリスクが2倍、全頭型脱毛症リスクは1.5倍

 解析対象は、国際疾病分類第10版(ICD-10)コードL63に基づくAAを主診断名として医療機関を3回以上受診した母親4万6,352例から2003~15年に出生した児6万7,364例(AA群、男児51.8%)と、1:10で出生年、性、医療保険の種類、所得レベル、居住地域をマッチングしたAAと診断されていない母親45万4,085例から出生した児67万3,640例(対照群)。

 対象を出生日から死亡、他国への移住、2020年12月31日のいずれか早い時点まで追跡し、事前に設定した自己免疫・炎症性疾患、アレルギー性疾患、甲状腺疾患、精神疾患の発症率を両群で比較した。

 中央値で11年(範囲5~17年)追跡した結果、対照群に対しAA群で発症リスクが有意に高かったのは、自己免疫・炎症性疾患ではAA〔調整後ハザード比(aHR)2.08、95%CI 1.88~2.30〕、全頭型脱毛症(同1.57、1.18~2.08)、白斑(同1.47、1.32~1.63)、アレルギー性疾患ではアトピー性皮膚炎(同1.13、1.10~1.15)、アレルギー性鼻炎(同1.04、1.02~1.07)、喘息(同1.03、1.01~1.05)、甲状腺疾患では甲状腺機能低下症(同1.14、1.03~1.25)、精神疾患では注意欠陥・多動性障害(ADHD:同1.16、1.10~1.21)、気分障害(同1.13、1.07~1.20)、不安障害(同1.14、1.07~1.20)だった。

全頭型・汎発性脱毛症、分娩時35歳以上、女児で精神疾患リスク上昇

 AA群のうち、より重症の全頭型脱毛症または汎発性脱毛症を有する母親から出生した児では、全頭型脱毛症の発症リスクが大幅に高く(aHR 2.98、95%CI 1.48~6.00)、ADHD(同1.26、1.08~1.48)、気分障害(同1.23、1.01~1.50)、不安障害(同1.24、1.02~1.51)の発症リスクもより高かった。

 また、分娩時年齢が35歳未満の母親と比べ、35歳以上の母親から出生した児はAA、アレルギー性疾患、精神疾患の発症リスクが高く、男児と比べて女児はAA、白斑、精神疾患の発症リスクが高かった。

 以上を踏まえ、Lee氏らは「母親のAAは児の自己免疫・炎症性疾患、アレルギー性疾患、甲状腺疾患、精神疾患の発症リスク上昇に有意に関連していた」と結論。「児のイベント発生を1例減らすために必要なスクリーニング検査数(NNS)は、ばらつきが極めて大きかったので、これら全ての疾患のスクリーニングをルーチンで行う必要はない。ただし、児がこれらの疾患の発症リスクを有することを認識すべき」と付言している。

(太田敦子)