東京慈恵会医科大学病院中央検査部の宮本博康氏らは、新たに開発した液体クロマトグラフィ質量分析(LC-MS/MS)システムを用い、日本で初めて血清25-水酸化ビタミンD〔25(OH)D〕の基準濃度を検証。健診受診者5,518人の血清25(OH)Dにおける基準濃度は6〜29ng/mLで、98%がビタミンD不足に該当したことをJ Nutr2023; 153: 1253-1264)に報告した。

女性は男性よりも有意に低い

 ビタミンD充足度の評価は血清25(OH)D濃度測定により可能で、日本内分泌学会および日本骨代謝学会による「ビタミンD不足・欠乏の判定指針」では、血清25(OH)D濃度20ng/mL以上30ng/mL未満をビタミンD不足、20ng/mL未満をビタミンD欠乏と定義している。

 今回の検討に用いたLC-MS/MSシステムは、島津製作所の自動検体前処理装置CLAM-2030CLおよびトリプル四重極型質量分析計LCMS-8050から成る。血清25(OH)D濃度の測定精度を化学発光酵素免疫測定法(CLEIA)および電気化学発光免疫測定法(ECLIA)との比較により検証した結果、相関係数(r)はそれぞれ0.965、0.949といずれも有意な相関が認められた(全てP<0.01)。

 次に、2019年4月〜20年3月に東京慈恵会医科大学関連施設で健康診断を受けた5,518人(男性3,400人、女性2,118人)の検体を用いて血清25(OH)D濃度を測定した結果、98%が30ng/mL未満のビタミンD不足であることが示された()。また、78.5%は20ng/mL未満のビタミンD欠乏症だった。平均25(OH)D濃度±標準偏差(SD)は15.5±5.96ng/mLで、基準濃度は全体が6〜29ng/mL、男性が7~30ng/mL、女性は5~27ng/mLと、女性の方が有意に低かった(P<0.01)。

図. 血清25(OH)D濃度の分布

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(東京慈恵会医科大学プレスリリースより)

 宮本氏らは「測定されたビタミンDの大半が動物あるいは日光由来のビタミンD3で、植物由来(シイタケなど)のビタミンD2はほとんど検出されなかったことから、食生活の変化により植物由来のビタミンDの摂取量が減少していると推察される。また、年齢が低いほどビタミンD不足の割合が高かった」と補足し、「今後の超高齢化社会に向け、骨粗鬆症骨折の予防につながるビタミンDの摂取はますます重要となる。ビタミンDが不足している現状に対する早急な介入とともに、ビタミンD不足を引き起こすその他の原因についても解析が求められる」と結論している。

(編集部)