骨粗鬆症〔こつそしょうしょう〕 家庭の医学

 骨の量が減少して骨折を起こしやすくなっている状態が骨粗鬆症(こつそしょうしょう)です。オステオポローシスともいいます。
 加齢によりカルシウム吸収や運動不足などが起こり、骨量は減少します。女性では閉経後、女性ホルモンの欠乏のために骨の吸収(骨からカルシウムが溶け出すこと)がふえ、骨量が減少します。そのほか、副腎皮質ステロイド薬の長期服用、関節リウマチ、腎不全、肝疾患などで起こる2次性骨粗鬆症があります。
 危険因子としては、高齢、女性、閉経、両側卵巣摘出、早い閉経年齢、やせなどの身体要因のほか、食生活習慣としてカルシウム摂取不足、たんぱく摂取不足、低栄養があげられ、生活習慣として運動不足、多量喫煙、多量飲酒、過度のコーヒー摂取などがあります。遺伝的な素因があることも指摘され、骨粗鬆症の家族歴も危険因子です。
 骨折が起こらなければ症状はありません。骨折しやすい部位は背骨、股の付け根、手くび、肩などです。背骨の骨折では、腰背部の痛み、背中の曲がり変形、身長の低下などが起こります。骨粗鬆症による骨折の有無を調べ、ない場合は骨密度測定かX線像で評価します。

 骨密度の数値は、若い成人の平均値の70%未満を骨粗鬆症と診断します。骨の吸収と形成の指標として、骨代謝マーカーを測定する方法があります。

[予防][治療]
 乳製品、大豆製品、魚などのカルシウムやたんぱく質を含むバランスのよい食生活、適度な運動習慣が予防になります。青少年期から予防することが大切です。
 若いときから骨量が少ない人、早く骨量が減っていく人など、骨粗鬆症になる危険性が高い場合、あるいは骨粗鬆症とすでに診断された場合は、薬物療法がすすめられます。
 薬物療法は近年進歩が著しく、強力で有効性の高い薬が次々と開発されています。骨粗鬆症の程度やタイプ、年齢に応じた適切な薬が使用されます。おもな薬と作用機序を記載します。
1.骨が吸収されて減少するのを防ぐ薬(骨吸収抑制剤)
 ・ビスホスホネート薬:骨を吸収する細胞のはたらきを抑えて、骨を減少しにくくします。
 ・サーム:骨に対して女性ホルモンと同様に作用し、骨のカルシウムが体内に溶け出るのを抑えます。
 ・デノスマブ:骨の成分を溶かす体内のはたらきを抑え、骨を減少しにくくします。6カ月に一度皮下注射します。

2.骨をつくる薬(骨形成促進剤)
 ・副甲状腺ホルモン薬:骨の新陳代謝を促進し、新たな骨を強力につくる作用があります(毎日自分で注射する方法と1週間に1度注射する方法があります)。
 ・ロモソズマブ:骨形成促進作用と骨吸収抑制作用をともにもちます。骨折の危険性の高い骨粗鬆症に対し、月1回皮下注射します。

3.その他の薬
 ・カルシウム薬:骨量の減少を予防します。カルシウム摂取量の少ない場合に服用します。
 ・活性型ビタミンD薬:腸管からのカルシウム吸収を助け、骨を強くします。
 ・ビタミンK薬:骨がつくられるのを助けます。

 転倒予防も大切で、下肢筋肉の強化、バランス能力の向上を目指す運動が有効です。室内の段差や暗さなど、高齢者の転倒につながる生活環境を改善することも必要です。転倒したときの大腿骨近位部骨折の予防として、衝撃吸収パッド(ヒッププロテクター)が開発されています。

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