前立腺がんに対する手術後の副作用として生じる場合が多い性機能障害について、患者の半数近くが改善の必要性を感じているにもかかわらず、身体的にも精神的にも十分な対処法は確立されていない。そのような中で、性機能障害改善に運動が有効である可能性が示唆されている。オーストラリア・Edith Cowan UniversityのDaniel A. Galvao氏らは米国臨床腫瘍学会国際腫瘍学会議(ASCO Breakthrough、8月3~5日)で、運動の実施が前立腺がん患者の性機能障害を改善することを報告した。

勃起障害は5.1%、性交満足度は2.2%改善

 Galvao氏らは2014~18年、前立腺がん患者のセクシャルヘルスに対するレジスタンス運動および有酸素運動の有効性を性心理療法の有無別に検討する目的で多施設ランダム化比較試験を実施した。試験は大学付属の運動クリニックで行われた。

 対象は以前または現在治療中で、性機能障害の可能性がある前立腺がん患者112例。6カ月間のグループ指導によるレジスタンス運動+有酸素運動群(39例)、同運動プログラム+性心理療法群(36例)、通常ケア群(37例)の3群にランダムに割り付けた。運動は大学付属の運動クリニックで毎週3日実施し、性心理療法は自己管理による心理的および性的ウェルビーイングに対処する手法で行われた。主要評価項目は国際勃起機能指数で評価したセクシャルヘルス、副次的評価項目は体組成、身体機能、筋力などとした。解析はintention-to-treat法を用いた。

 検討の結果、試験期間後に勃起機能は運動群および運動+性心理療法群で5.1%〔臨床的に意義のある最小差(MICD)以上〕、通常ケア群で1.0%改善した(交互作用のP=0.010)。性交満足度は運動群および運動+性心理療法群で2.2%、通常ケアで0.2%改善した(交互作用のP=0.026)。運動に自己管理による心理療法を併用しても、さらなる性機能の改善は見られなかった。

 以上の結果から、同氏らは「監視下でのレジスタンス運動および有酸素運動により前立腺がん患者の勃起機能および性交満足度は改善することが示唆された」と結論。一方、「自己管理下での性心理療法ではそれ以上の改善は見られなかった」とし、「性機能障害の可能性がある前立腺がん患者には運動を行うよう勧めるべきである」と指摘している。

服部美咲