英・University of SurreyのDavid Russell-Jones氏らは、1型糖尿病患者を対象に、週1回投与のインスリン製剤icodecと1日1回投与のインスリンデグルデクを比較した第Ⅲa相非盲検ランダム化比較試験ONWARD6の結果をLancet(2023年10月17日オンライン版)に発表。「主要評価項目である26週時点におけるHbA1cのベースラインからの変化量はインスリンデグルデグと同等で、非劣性が証明された」と報告した。

12カ国・99施設で実施

 1型糖尿病治療のゴールドスタンダードは、1日に複数回皮下注投与する基礎・追加インスリン療法(Basal-Bolus療法)、またはインスリンポンプ療法(CSII)だが、広く施行されているのは依然、Basal-Bolus療法だ。しかし、アドヒアランスや血糖変動改善のためには、基礎インスリンの注射頻度を減らすことが望ましい。

 icodecは半減期が長く、週1回投与のインスリンアナログ製剤として開発中で、日本では今年(2023年)8月に「インスリン療法が適応となる糖尿病」を適応症として承認申請が行われている(関連記事:「初の週1回投与インスリン製剤を承認申請」「ついに来る!!インスリン週1回注射の時代」)。

 icodecの有効性と安全性はONWARDS1~6で検討されており(Diabetes Obes Metab 2023; 25: 331-341)、ONWARD6は1型糖尿病患者に週1回のicodecまたは1日1回のインスリンデグルデクを投与した初めての第Ⅲa相試験だ(いずれの群にも追加インスリンとして超速効型製剤インスリンアスパルトを併用)。試験は日本を含む12カ国99施設で実施された。

HbA1cの改善幅の差は0.3%ポイント以内

 2021年4月30日~10月15日に582例をicodec群(290例)またはデグルデグ群(292例)にランダムに割り付けた。全体の平均年齢は44.2±14.1歳、男性は337例(58%)、BMI は26.5±4.8、ベースラインのHbA1cは7.61±0.94%、空腹時血糖値(FPG)は176±73mgで、その他の因子を含めて患者背景に群間差はなかった。

 555例が26週間、540例は52週間の試験を完遂した。26週時点におけるHbA1cのベースラインからの変化量はicodec群-0.47%ポイント、デグルデグ群-0.51%ポイント、推定治療間差(ETD)は0.05%ポイント(95%CI -0.13~0.23%ポイント)と、非劣性マージンの0.3%ポイントを下回り非劣性が確認された(非劣性のP=0.0065、両側検定)。

22~26週ではicodec群で低血糖リスク高い

 また、副次評価項目の1つである22~26週のtime in range(TIR:1日のうち血糖値が70~180mg/dLの範囲内にある時間の割合)はicodec群が59.1%(約14時間11分に相当)、デグルデグ群が60.8%(約14時間36分に相当)で、ETDは-2.00%(95%CI -4.38~0.38%、P=0.099)と有意差はなく、time above range (TAR:TIRより高血糖域にある時間の割合)についても両群で差はなかった(P=0.37)。

 しかし、22~26週のtime below 54mg/dL(1日のうち血糖値が54mg/dL未満にある時間の割合)はicodec群が1.0%(約15分)、デグルデグ群が0.7%(約10分)、推定治療間比(ETR)は1.46(95%CI 1.16~1.85、P=0.0014)とicodec群で有意に高かった。

 48~52週では、TIR、TAR、time below 54mg/dL〔両群とも0.8%(約12分)〕のいずれも両群間で有意差はなかった。

長いランダム割り付け期間と高い完遂率が強み

 以上の結果について「Russell-Jones氏らは「成人の1型糖尿病患者に対する週1回投与のインスリン製剤icodecは、26週時点のHbA1c低下作用に関し、1日1回投与のインスリンデグルデクに対する非劣性が示された。22~26週のtime below 54mg/dLは1.0%と国際的な勧告目標である1%未満を超えたが、48~52週では目標値を下回っていた」と結論。

 研究の強みとして、①1型糖尿病の試験としてはランダム割り付けの治療期間が長い、②90%以上の患者が26週/52週の治療を完遂しデータの頑健さ(robustness)を担保している―ことを挙げ、さらに「非盲検のデザインは研究の限界だが、両治療群の投与頻度の違いから盲検化は現実的でなかった」と付言している。

木本 治