インタビュー

肥満症、笠間和典医師に聞く(下)=減量外科手術、糖尿病にも期待

 肥満症の治療法として注目される減量外科手術は少しずつ広まっている。糖尿病への効果も期待されるが、「四谷メディカルキューブ」の笠間和典医師は、特に若い患者に推奨したいと話している。

 ◇保険適用で増加

 ―画期的な治療法ですね。日本でも行われているのでしょうか。
 笠間 日本は、欧米に比べて手術を必要とするほどの高度肥満の人が少なかったため、長い間、減量目的での手術があまり行われてませんでした。外科医の多くがすぐには命に関わらない肥満治療に対して、リスクの高い外科手術を行うことに抵抗を感じていたようです。2014年にBMI35以上の患者さんに対して、胃を小さく切除する「スリーブ状胃切除術」が保険適用となってからニーズが高まり、日本でも手掛ける医療機関が増えています。現在、国内では25施設で行われています。多くの施設では年間10~20症例程度と手術件数が少ないのが現状ですが、今後、医師の教育・研修体制が整えば、徐々に広がっていくと思います。

 ◇若い患者に勧めたい

 ―世界的には既にスタンダードな治療なのに、日本では海外に比べて遅れているということは、日本人には向かない治療なのでしょうか。
 笠間 いいえ、そんなことはありません。それどころか欧米人よりも日本人を含むアジア人にはとても効果が高い治療です。アジア人は欧米人に比べてインスリンの分泌量が少ないので、肥満症になると膵臓(すいぞう)の機能が早いうちから低下して、インスリンが出づらくなります。通常、糖尿病になるとインスリン注射でインスリンを補うのですが、減量外科手術をすると、インスリンの分泌を促す消化管ホルモンの分泌が増えるので、薬物治療では到達できないぐらいの効果が表れるのです。
 現在、糖尿病を患っている日本人でBMI27.5以上の人は糖尿病全体の15%なので、約150万人です。そのうち、自分で体重のコントロールができないであろう数十万人は症状がどんどん悪化し、透析を余儀なくされます。失明、足の壊死(えし)による切断、さらには死に至ります。内科治療で改善しない患者さんにとっては大変効果的な治療と言えます。
 また、高齢になって糖尿病を発症する人が増えているのも事実ですが、意外と知られていないのが、遺伝子異常により40歳以下で発症する若年性の2型糖尿病です。アジア人はこのタイプが欧米人に比べて多く、全体の2割を占めています。彼らが35歳まで糖尿病を発症した場合、徐々に症状が進行し、60歳までに6割の人が失明もしくは一生涯透析になるのです。これは社会的にも経済的にも大きな損失です。減量手術は、若くして糖尿病を発症し一生治療を続けなければならない可能性がある患者さんには、特に勧めたい治療法です。

 ◇手術方法は4種類

 ―保険で手術が受けられるとのことですが、該当するすべての患者さんに適用されるのでしょうか。
 笠間 減量外科手術は、現在4種類の術式があり、患者さんの様態や希望を聞いて選びます。国内で一番多く行われているのは、保険適用となっていることもあり「スリーブ状胃切除術」です。この手術は胃をバナナ1本ぐらいの大きさに小さくすることで、食事が制限され、摂取カロリーが減ることで減量できます。胃を切り取ってしまうため、元に戻すことができませんが、食べ物は通常通り消化吸収されます。胃の上部をバンドで締めて二つに分ける胃バンディング手術よりも効果が高いと言われています。
 スリーブ手術よりも効果的なのが、栄養吸収を制限する2種類のバイパス手術です。胃を20~30ccの小さな袋に分け、小腸へつないで吸収量を下げる方法です。食事制限だけでなく、消化吸収も阻害されるので米国では最も多く行われていて、米国肥満代謝外科学会でゴールドスタンダードとなっています。高度肥満症の患者さんにはお勧めしていますが、日本では保険適用外のため自由診療。当院では治療費が200万円ほどかかります。

 ◇肥満解消で変わるQOL

 ―減量外科手術は糖尿病以外でも効果がありますか。
 笠間 外科手術後は肥満を原因とする糖尿病のほかにも、高血圧・高脂血症・睡眠時無呼吸症候群などは高い確率で治癒や改善します。睡眠時に鼻にマスクを装着し気道に空気を送り込む「シーパップ(CPAP)療法」を続けている中等度以上の睡眠時無呼吸症候群の患者さんからは、装置を着けずに寝られるようになったと言われます。生活習慣病で負担していた医療費が大幅に減るので、自費で手術しても数年で元が取れるということです。肥満解消で生活の質(QOL)が大きく変わります。アレルギーが改善したという報告もあり、肥満と病気との関係が今後さらに明らかになるのではないかと期待しています。(ソーシャライズ社提供)

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