東京慈恵会医科大学皮膚科学講座の安田健一氏らは、アトピー性皮膚炎(AD)患者の夜間の睡眠および搔破行動を測定する手背装着型アクチグラフ(ハンドアクチグラフ)と、睡眠・搔破データや外用薬の使用状況などを管理する専用スマートフォンアプリを開発。成人AD患者40例で検証した結果、ハンドアクチグラフによる睡眠・搔破測定は信頼性が高く、スマートフォンアプリと併用することで患者のQOLが改善されたとActa Derm Venereol(2023; 103: adv11922)に発表した。

シート型体振動計や赤外線ビデオの結果とよく一致

 安田氏らはまず、ハンドアクチグラフによる測定において搔破と非搔破の動きを識別し、睡眠と搔破行動を検出するアルゴリズムを開発。中等症~重症AD患者5例(男性3例、女性2例、平均年齢35±7.9歳)で検証した。

 その結果、ハンドアクチグラフによる睡眠状態の検出精度は、従来のマットレス下に設置するシート型体振動計による検出精度と高い相関を示し、一致率は90.5%、感度は95.5%、特異度は64.7%だった。

 また、ハンドアクチグラフで記録した睡眠1時間当たりの合計搔破時間は、赤外線ビデオ録画により評価した時間と有意な正の相関を示した(左手での測定:r=0.897、slope=1.12、両手での測定:r=0.754、slope=2.31)

各種スコア表示や薬の使用を促すアプリ併用でQOL改善

 次に、ハンドアクチグラフと併用するスマートフォンアプリを開発。①ハンドアクチグラフによる睡眠・搔破測定のスコア表示、②皮膚疾患のQOL評価指標(DLQI)などのスコアの記録、③外用薬および保湿薬の使用を促す表示と使用の記録-の3種類の機能を搭載した。

 ハンドアクチグラフとスマートフォンアプリの併用がAD患者のQOLを改善するかどうかを非盲検ランダム化比較試験で検討した。成人AD患者40例を登録し、通常のAD治療に加えて両者を併用する介入群(平均年齢36.8歳、男性55.0%)と使用しない対照群(同42.0歳、65.0%)に20例ずつランダムに割り付けた。

 解析の結果、介入群ではベースラインと比べて8週時点のDLQIスコアおよび湿疹面積・重症度指数(EASI)スコアが有意に低下した(順にP<0.001、P<0.01)。また、8週時点で介入群のDLQIスコアおよびEASIスコアは対照群と比べて有意に低かった(全てP<0.05)。

アドヒアランスも改善傾向

 治療へのアドヒアランスを評価する目的で測定した保湿薬の平均使用量は、有意差はないものの対照群と比べて介入群で多かった(280.0±267.2g vs. 355.3±239.8g、P=0.372)。

 以上の結果から、安田氏らは「ハンドアクチグラフとスマートフォンアプリの併用は、AD患者のQOL改善に寄与することが示された」と結論。「ハンドアクチグラフの性能は、臨床的に十分許容できるものと考えられる」と述べ、「QOLと密接に関連する睡眠障害と搔破行動を同時に測定できるのが、ハンドアクチグラフの重要な利点である」と付言している。

太田敦子