フランス・Centre Hospitalier Régional Universitaire de ToursのStephan Ehrmann氏らは、侵襲的機械換気を72時間以上受けている成人を対象に、抗菌薬アミカシン吸入薬の予防投与が人工呼吸器関連肺炎(VAP)の発症を抑制するかどうかを医師主導多施設二重盲検プラセボ対照ランダム化優越性試験AMIKINHALで検討。その結果、1日1回3日間のアミカシン吸入投与は、その後28日間におけるVAP発症率をプラセボと比べて有意に低下させたとN Engl J Med(2023年10月25日オンライン版)に発表した。
侵襲的機械換気3日目から1日1回3日間吸入
AMIKINHALでは、フランスの19施設において侵襲的機械換気を72時間以上96時間未満(3日以上4日未満)受けている成人850例を登録。標準体重1kg当たり20mgのアミカシンまたはプラセボ(0.9%塩化ナトリウム)を1日1回3日間吸入投与する群に1:1でランダムに割り付けた。試験への同意撤回例を除外したアミカシン群417例(平均年齢62歳、男性68%)、プラセボ群430例(同61歳、63%)の計847例を解析に組み入れた。
ランダム化時点で全体の78%が抗菌薬の全身投与を受けており、ランダム化前の侵襲的機械換気の平均施行期間は3.5日だった。1日1回3日間の吸入投与を全て行った患者は、アミカシン群で337例(81%)、プラセボ群で355例(83%)だった。
解析の結果、主要評価項目としたランダム化後28日間におけるVAP初回発症は、プラセボ群の95例(22%)に対しアミカシン群では62例(15%)と有意に抑制されていた〔VAP発症までの境界内平均生存期間(RMST)の群間差1.5日、95%CI 0.6~2.5日、P=0.004〕。
介入のタイミングについてはさらなる検討を
副次評価項目としたVAPを含むイベントの発生率は、人工呼吸器関連状態についてはプラセボ群の40%に対しアミカシン群は33%〔ハザード比(HR)0.79、95%CI 0.64~0.99〕、感染関連性人工呼吸器関連合併症は26% vs. 18%(同0.66、0.50~0.89)、VAP可能性例は10% vs. 5%(同0.46、0.27~0.78)といずれもプラセボ群と比べてアミカシン群で低かった。
試験に関連した重篤な有害事象の発現率は、アミカシン群が1.7%(7例:呼吸回路フィルター抵抗上昇4例、気管チューブ閉塞1例、気管支痙攣2例)、プラセボ群が0.9%(4例:呼吸回路フィルター抵抗上昇、気管チューブ閉塞、気管支痙攣、パルスオキシメーター測定値低下が各1例)で有意差はなかった(P=0.38)。
以上の知見を踏まえ、Ehrmann氏らは「3日間以上にわたり侵襲的機械換気下にある成人患者に対する3日間の予防的なアミカシン吸入投与は、その後28日間のVAP発症を有意に抑制した」と結論。介入のタイミングについては、「3日未満からの早期介入では、吸入抗菌薬への曝露が増すことで耐性菌の選択圧が高まる可能性がある。逆に、ランダム化時点で気道の細菌定着が認められた患者は22%にすぎなかったので、4日目以降での遅い介入について検討する必要があるかもしれない」と付言している。
(太田敦子)