梅毒に感染した妊婦から胎児にうつる「先天梅毒」の今年の報告数が、過去最多を更新したことが28日までに、国立感染症研究所のまとめで分かった。患者全体の報告数も3年連続で最多を更新しており、自治体などが注意を呼び掛けている。
 梅毒は「梅毒トレポネーマ」と呼ばれる細菌による感染症。主に性的接触でうつり、性器や口にしこりができた後、全身の発疹といった症状が出る。早期の抗菌薬治療で完治が可能だ。
 感染研によると、2023年の患者報告数は19日時点で1万3251人(速報値)。22年は1万3228人(同)で、現在の調査方法となった1999年以降初めて1万人を超えていた。流行の原因として、SNSで出会った不特定多数との性行為などが指摘されるが、明確な要因は分かっていない。
 都道府県別では、東京が最多の3244人。大阪1760人、福岡829人、愛知751人、北海道607人と続き、都市部で多い傾向が見られる。
 先天梅毒は母体から胎盤を通じて胎児にうつり、知的障害や視覚・聴覚障害などが出る恐れがある。10月4日時点の報告数は速報値で32人。18年以降は年20人前後で推移し、最多は19年の23人だったが、これを大幅に上回った。感染者の全体数増加が影響した可能性がある。
 都はホームページで「予防にはコンドームの正しい利用が有効」とし、症状があれば医療機関を受診するよう推奨している。先天梅毒も死産や早産につながり得るほか、子どもが障害を持って生まれる恐れがあるとして「妊婦健診で検査があるが、健診後に感染する場合もある。気になることがあれば、主治医に相談してほしい」と求めている。 (C)時事通信社