オランダ・Amsterdam University Medical CentresのAlbert J. Bredenoord氏らは、好酸球性食道炎患者を対象にした抗インターロイキン(IL)-4/13受容体抗体デュピルマブの第Ⅲ相ランダム化比較試験のサブ解析結果をGut(2023年11月27日オンライン版)に報告。「ステロイド食道局所(嚥下)治療(swallowed topical corticosteroids;STC)の使用経験、効果不十分(無効)、禁忌の有無にかかわらず、デュピルマブは好酸球性食道炎患者に有効であることが確認された」と述べている。

ステロイド失敗例は予後不良

 デュピルマブは、LIBERTY EoE TREET試験で好酸球性食道炎患者の組織学的寛解(高倍率1視野での好酸球数6個以下)達成率と嚥下障害症状(DSQスコア)を有意に改善することが既に報告されている(関連記事:「好酸球性食道炎にデュピルマブが有効」)。

 今回のサブ解析はベースラインでのSTC使用歴の有無、STCの効果不十分/不耐用/禁忌(inadequate response, intolerant or contraindicated to swallowed topical corticosteroids)例(以下、STC無効/禁忌例)における有効性と安全性を検証したもの。

 炎症性腸疾患などの消化菅疾患では、ステロイド治療の失敗は予後不良因子とされ、その後の治療の無効や合併症リスク上昇との関連が指摘されている。このような背景のため、好酸球性食道炎に対するデュピルマブの有効性の評価に際しても、ステロイド使用歴別のサブ解析が事前に提案されていた。

STC使用歴にかかわらず組織学的寛解率とDSQスコア改善

 同試験のPart Aに登録された81例(プラセボ群39例、デュピルマブ週1回投与群42例)のうち74%(60例)、Part Bに登録された240例(プラセボ群79例、週1回投与群80例、隔週投与群81例)のうち73%(176例)にベースラインでSTC使用歴があった。

 ベースラインでのSTC無効/禁忌例に関するデータはPart Bのみで集計され、48%(116例)が無効/禁忌例に分類された。ただし、難治性好酸球性食道炎の確立された定義は存在しないので(Nat Rev Gastroenterol Hepatol 2017 ; 14: 479-490)、分類は各主治医の判断に委ねた。

 解析の結果、デュピルマブは、STC使用例(Part A:デュピルマブ群52% vs. プラセボ群0%、Part B:同64% vs. 5%、いずれもP<0.0001)、未使用例(Part A:同77% vs. 25%、P<0.05、Part B:同48% vs. 9%、P<0.01)いずれにおいても組織学的寛解率を有意に改善した。DSQスコアについてもSTC使用の有無にかかわらず、デュピルマブ群ではプラセボ群に比べ改善が見られた。

 STC無効/禁忌例かどうかで分けた解析でも、デュピルマブは組織学的寛解率を有意に改善した(STC無効/禁忌例:デュピルマブ群55% vs. プラセボ群8%、STC効果あり例:62% vs. 5%、いずれもP<0.0001)。DSQスコアも、STC無効/禁忌例かどうかにかかわらず、デュピルマブ投与群ではプラセボ群よりも改善が見られた。

STC無効/禁忌例の判定基準なく曖昧さ残る

 以上の結果を踏まえBredenoord氏らは「STCは好酸球性食道炎に広く使われているが、組織学的寛解の誘導に失敗する例があり、再燃や無効に至る例も少なくない。治療に対するアドヒアランスの維持も課題である」とコメント。「今回のサブ解析の結果、STCの使用歴があってもデュピルマブの治療効果が損なわれないこと、さらに、STC無効/禁忌例に対してもデュピルマブは有効であることが確認できた」と結論している。

  研究の限界としては、①STC無効/禁忌の分類を主治医の判断に依存したこと、②Part Aの参加者については、STC無効/禁忌の情報がなかったこと-を挙げた。

木本 治