アトピー性皮膚炎(AD)の治療にはステロイド外用薬が用いられるが、小児患者では親が副作用への不安からステロイド外用薬を忌避し、アドヒアランス不良となるケースがしばしば見受けられる。イタリア・IRCCS Istituto Giannina GasliniのAstrid Herzum氏らは、小児AD患者100例とその親を対象にステロイド忌避(恐怖症)の実態と危険因子を検討。その結果、親の約半数が重度のステロイド恐怖症で、その主な危険因子は患児の4歳超の高年齢および1歳未満での早期発症、親のQOL低下および高等学校卒業以上の高学歴だったとJ Clin Med2023; 12: 6813)に発表した。

軽症~中等症ADが44%

 解析対象は、小児AD患者100例(女児53例、男児47例、平均年齢5.9歳、平均罹病期間4.3年)とその親の一方。親はステロイド外用薬の使用についての不安評価尺度(Topical Corticosteroid Phobia;TOPICOP)および皮膚疾患のQOL評価指標(Dermatology Life Quality Index;DLQI)を用いた質問票に回答した。

 患児の内訳は、湿疹面積・重症度指数(EASI)スコアが21以下の軽症~中等症ADが44%、21超の重症ADが56%で、平均EASIスコアは19.7だった。AD関連の医療機関の受診歴は「あり」が67%、「なし」が33%で、51%が全く治療を受けていなかった。

 親は、高卒以上の高学歴が40%を占め、平均DLQIスコアは10.71、平均TOPICOPスコアは39.1%で、重度ステロイド恐怖症(TOPICOPスコア50%超)が49%を占めた。

高学歴の親は誤解を招くような情報も収集か

 χ2検定などの結果、親の重度ステロイド恐怖症と有意な関連が認められた患児の背景因子は、軽症~中等症AD〔オッズ比(OR)20.9487、95%CI 7.2489~60.5402〕、4歳超の高年齢(同4.1176、1.7880~9.4828)、1歳未満での早期発症(同9.8925、2.7064~36.1596)、医療機関の受診歴あり(同4.9279、1.9335~12.5597)だった(全てP<0.001)。

 また、親の重度ステロイド恐怖症と有意な関連が認められた親の背景因子は、QOL低下を示すDLQIスコア11以上の高値(OR 33.3333、95%CI 10.9046~101.8937)、高学歴(同5.2727、2.1927~12.6790)だった(全てP<0.001)。

 ロジスティック回帰分析で親の重度ステロイド恐怖症と有意な関連が認められた因子は、親のDLQIスコア高値(OR 38.5225、95%CI 7.7225~192.1636、P<0.0001)、親の高学歴(同4.1177、1.1144~15.2145、P<0.0338)、患児の高年齢(同14.5364、2.7818~75.9615、P=0.0015)、早期発症(同8.1052、0.9884~66.4655、P<0.0513)だった。

 高学歴の親で重度のステロイド恐怖症リスクが高まることについて、Herzum氏は「ADの局所療法に関する情報の収集に積極的である傾向が強い故に、しばしばステロイドに対する誤解を招くような情報にも触れていることを示唆している」と指摘した。

 以上を踏まえ、同氏らは「児のAD病歴が長く(高年齢、早期発症)、DLQIスコア高値および高学歴の親は重度のステロイド恐怖症となるリスクが高いことが示された。根拠のない不安を解消し、治療へのアドヒアランスおよび満足度を高めてAD患児の転帰を改善するために、ADとステロイド外用薬に関する正しい情報を提供することが不可欠である」と結論している。

(編集部)