英・Queen Mary University of LondonのJack Cuzick氏らは、アロマターゼ阻害薬アナストロゾールの乳がん予防効果について検討したランダム化比較試験IBIS-Ⅱにおいて、乳がんの発症リスクが高い閉経後女性を対象とした事前計画症例対照研究を実施。アナストロゾールの乳がん予防効果は、エストラジオール/性ホルモン結合グロブリン(SHBG)比の高低により異なるとの結果をLancet Oncol(2023年12月6日オンライン版)に発表した。
エストラジオール/SHBC比高値で乳がんリスク上昇
IBIS-Ⅱ試験では、18カ国153施設において乳がん発症リスクが高い40~70歳の閉経後女性3,864例を登録。アナストロゾール群とプラセボ群に1:1でランダムに割り付けて5年間投与した。中央値で131カ月の追跡期間中に、アナストロゾール群の85例(4.4%)とプラセボ群の165例(8.5%)が乳がんを発症。アナストロゾール予防投与により乳がん発症リスクが49%低下することが示されていた。
今回の事前計画症例対照研究では、各群で症例(乳がん発症例)1例に対し年齢と追跡期間をマッチングした対照(非発症例)2例をランダムに選出。アナストロゾール群の212例(症例72例、対照140例)とプラセボ群の416例(同142例、274例)を研究に組み入れた。
解析の結果、ベースラインのエストラジオール/SHBG比の上昇とともに乳がんリスクが上昇する明確な傾向がプラセボ群で認められたが〔エストラジオール/SHBG比の四分位群が1段階上昇するごとのリスク上昇傾向(乗法スケール)1.25、95%CI 1.08~1.45、P=0.0033〕、アナストロゾール群では認められなかった(同1.06、0.86~1.30、P=0.60)。
同様に、テストステロン/SHBG比の上昇に伴うリスク上昇傾向がプラセボ群で認められたが(リスク上昇傾向1.21、95%CI 1.05~1.41、P=0.011)、アナストロゾール群では認められなかった(同1.18、0.96~1.46、P=0.11)。
最低値群ではアナストロゾールの予防効果を認めず
さらに、プラセボに対するアナストロゾールの相対的な乳がん予防効果を「1-(アナストロゾール群の症例数/プラセボ群の症例数)」として算出した。その結果、エストラジオール/SHBG比の第2~第4四分位群(最高値群)ではプラセボと比べて有意な効果が認められたが(相対ベネフィット0.55、95%CI 0.32~0.68、P<0.0001)、第1四分位群(最低値群)では認められなかった(同0.18、-0.60~0.59、P=0.64)。
以上を踏まえ、Cuzick氏らは「血中ホルモン濃度測定は費用が安く、アロマターゼ阻害薬による乳がん予防効果が高い女性の特定に有用な可能性がある。血中ホルモン濃度をルーチンで測定し、リスク管理に組み込むべきである」と結論している。
(太田敦子)