大阪大学大学院保健学専攻のYaya Li氏らは、厚生労働省が運用する匿名医療保険等関連情報データベース(NDB)のデータを用い、成人2型糖尿病患者における推算糸球体濾過量(eGFR)低下の危険因子となる生活習慣を検討。その結果、朝食抜きや習慣的な喫煙などの生活習慣が2年間で30%以上のeGFR急低下と関連しており、特定されたeGFR急低下の危険因子にはベースラインのeGFR、年齢、性による差が認められたとPLoS ONE2023; 18: e0295235)に発表した。

朝食抜きと習慣的喫煙が40~74歳で危険因子に

 解析対象は、2018年(ベースライン)の年齢が40~74歳、eGFRが85mL/分/1.73m2未満で、2020年の特定健診を受診した2型糖尿病患者57万3,860例(男性77.30%)。このうち、2018~20年の追跡期間中に30%以上のeGFR低下が認められたeGFR急低下群は7,683例(1.34%)だった。

 性、HbA1c、心血管疾患の既往歴などを調整後のロジスティック回帰モデルを用い、①習慣的な喫煙(合計100本以上または6カ月以上の喫煙歴があり直近1カ月にわたり喫煙)、②多量飲酒(女性で20g/日、男性で40g/日以上のアルコール摂取)、③朝食抜き(週3日以上)、④遅い夕食(就寝前2時間以内の夕食が週3日以上)、⑤運動習慣(1回30分以上の軽い運動を週2回、1年以上継続)なし、⑥睡眠不良(疲労回復感・爽快感がない)-とeGFR急低下との関連を解析した。

 その結果、朝食抜きはベースラインeGFRが30mL/分/1.73m2以上の群でeGFR急低下と有意に関連しており、40~59歳では60~85mL/分/1.73m2群〔オッズ比(OR)1.57、95%CI 1.34~1.84、P<0.001〕、60~74歳では60~85mL/分/1.73m2群(同1.32、1.07~1.63)、30~59mL/分/1.73m2群(同1.35、1.06~1.70)、30mL/分/1.73m2未満群(同1.88、1.15~3.09、全てP<0.05)の全eGFR群でeGFR急低下の危険因子だった。

 同様に、習慣的な喫煙は40~59歳のベースラインeGFR 60~85mL/分/1.73m2群(OR 1.29、95%CI 1.12~1.50)と30~59mL/分/1.73m2群(同1.45、95%CI 1.21~1.73)、60~74歳の60~85mL/分/1.73m2群(同1.40、1.20~1.63)と30~59mL/分/1.73m2群(同1.84、1.55~2.17)でeGFR急低下と有意に関連していた(全てP<0.001)。

運動不足と遅い夕食は60歳以上、睡眠不良は60歳未満が危険因子

 60~74歳におけるeGFR急低下の危険因子は、運動習慣なし(60~85mL/分/1.73m2群:OR 1.21、95%CI 1.06~1.39、P<0.01、30~59mL/分/1.73m2群:同1.48、1.26~1.74、P<0.001)と遅い夕食(30~59mL/分/1.73m2群:同1.22、1.03~1.45、P<0.05)だった。40~59歳における危険因子は睡眠不良(30~59mL/分/1.73m2群:OR 1.19、95%CI 1.00~1.42、30mL/分/1.73m2未満群:同1.36、1.00~1.85、ともにP<0.05)だった。

 また、40~59歳のベースラインeGFR 30~59mL/分/1.73m2群では、多量飲酒がeGFR急低下の保護因子であることが示唆された(OR 0.75、95%CI 0.59~0.95、P<0.05)。

 以上を踏まえ、Li氏らは「生活習慣の改善により、糖尿病関連腎臓病の悪化を効果的に予防できる可能性がある。ただし、そのメカニズムは依然として不明であり、さらなる研究が必要である」と結論している。

太田敦子