日本は世界で川崎病の発生が最も多く報告され、年間1万例以上の新規患者が発症し、乳幼児の100人に1人が罹患すると推定されている。患者の約20%は1歳未満と、乳児期において発症リスクが高い。横浜市立大学大学院発生成育小児医療学の福田清香氏らは、「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」の2019年のデータセットを用いて、母親の妊娠中期~後期の葉酸サプリメント摂取頻度、血中葉酸濃度の分布と児の生後12カ月までの川崎病発症リスクの関連を解析。その結果、葉酸サプリ摂取頻度が低い母親に比べ、高い母親から生まれた児は川崎病発症リスクが低下する傾向が見られたと報告した(JAMA Netw Open 2023; 6: e2349942)。

妊婦血液中の葉酸濃度10ng/mL以上でオッズ比0.68

 福田氏らは、エコチル調査の2019年のデータセットから、母親の妊娠中の葉酸摂取に関するデータがあり、母親が児の生後6カ月、12カ月時のアンケートに両方回答した母子8万7,702組を抽出。12カ月追跡し、母親の妊娠中の葉酸摂取と児の川崎病発症との関連を検討した。主要評価項目は生後12カ月までの川崎病発症とし、6カ月時と12カ月時に行ったアンケートで確認した。

 追跡期間中に川崎病を発症した児は336例だった。

 出生児8万7,702例を母親の妊娠中期~後期の葉酸サプリメント摂取頻度で4群(毎日、週1回以上、月1回以上、摂取なし)に分け、母親の血中葉酸濃度との関連を検討したところ、葉酸サプリメントの摂取頻度が高い群ほど葉酸濃度も高かった。

 また、傾向スコアマッチングにより、母親の妊娠前の身体的特徴、両親の既往歴および学歴、世帯収入などを調整したロジスティック回帰分析で母親の血中葉酸濃度および葉酸サプリメント摂取頻度と生後12カ月までの児の川崎病発症率との関係を検討した。その結果、川崎病の発症リスクは、葉酸濃度が10ng/mL以上の母親から生まれた児では、10ng/mL未満の母親から生まれた児に比べ有意に低かった(0.27% vs. 0.41%、オッズ比0.68、95%CI 0.50~0.92)。

 同様に妊娠中期~後期に葉酸サプリメントを週1回以上摂取した母親から生まれた児は、摂取しなかった母親から生まれた児に比べリスクが有意に低かった(0.30% vs. 0.43%、オッズ比0.73%、95%CI 0.57~0.94)。

 一方、母親の食事からの葉酸摂取量に、川崎病発症児と非発症児で差はなかった。

週1回以上の葉酸サプリメント摂取を

 以上の結果から、福田氏らは「妊娠中期~後期に週1回以上葉酸サプリメントを摂取し、血中葉酸濃度を10ng/mL以上に維持することで出生児の乳児期の川崎病発症リスクを低減できる可能性が示唆された」と結論。「川崎病は大半の患者が6歳までに発症するため、次回の検討では解析年齢を6歳まで拡大し、出生後の因子も含め川崎病発症に関連する因子について解析を進めたい」と展望している。

(小田周平)