川崎病〔かわさきびょう〕 家庭の医学

 川崎富作博士が発見したので、この名前がついています。原因は不明です。

[症状]
 乳幼児に多い病気です。次の6つの主要症状のうち、5つ以上伴うことが診断の条件になっています。
 1.発熱
 2.手足の先の変化(急性期には手足のむくみや指先の赤み、回復期では指先から皮がむける)
 3.発疹(ほっしん)(BCGの接種部位の発赤を含む)
 4.眼球結膜の充血(しろめが赤くなる)
 5.くちびるや口内の所見(くちびるが赤い、舌がイチゴのように赤くボツボツになる、のどや口の粘膜が赤くなる)
 6.くびのリンパ節がはれる
 そのほか、消化器症状(下痢、嘔吐〈おうと〉、腹痛)、呼吸器症状(せき、鼻汁)、神経症状(けいれん、意識障害、まひ)、関節の痛みやはれなど、多様な症状を示す場合があります。

 もっとも重要なことは、冠動脈合併症の有無です。大動脈の付け根から出て心臓をおおうように走行する3本の冠動脈は、心臓の筋肉に酸素や栄養を供給している血管です。

 40%の患者で、冠動脈の付け根が発病後10日から2週間でふくれ、さらに10%の患者では動脈瘤(どうみゃくりゅう:血管がこぶのようにふくらんだもの)ができ、その中に血栓(小さな血のかたまり)をつくったり、動脈瘤の前後の血管が狭くなったりします。
 重症な場合(患者の1%)では、血管が閉塞し、そのさきの心臓の筋肉が死んでしまう心筋梗塞を起こします。乳幼児の心筋梗塞は胸痛を伴わず、顔いろ不良や不きげんなどの症状のみのことが多いのが特徴です。

[検査][治療]
 発症後2週間程度は入院し、胸部X線検査、心電図、心エコーをくり返しおこない、冠動脈病変およびほかの心合併症の有無を調べます。発症早期にアスピリンを内服し、大量の免疫グロブリンを静脈注射することで、冠動脈瘤の発生を予防します。免疫グロブリンに抵抗性の場合は、副腎皮質ステロイド薬、生物学的製剤(インフリキシマブ)、免疫抑制薬、血漿(しょう)交換が選択されることがあります。
 動脈瘤が形成された場合は、さらに心臓カテーテル検査が必要です。血栓ができないようにアスピリンの服用を持続し、血管に細い部分があれば、運動制限が必要です。左冠動脈の根元や3本の血管全部が狭くなった場合は、バイパス手術(胸の動脈や足の静脈を使って、狭くなった先の部分へ血液を送る血管をつなぐ手術)が必要になることもあります。
 川崎病性冠動脈瘤は小児慢性特定疾病として、公的医療費助成が受けられます。

【参照】心臓の病気:川崎病

(執筆・監修:自治医科大学 名誉教授/茨城福祉医療センター 小児科 部長 市橋 光
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