【イスタンブール時事】イスラエル首相府は12日、パレスチナ自治区ガザで交戦するイスラム組織ハマスとの仲介役を務めるカタールとの協議で、ハマスに拘束されている人質に向けて数日内に医薬品を搬送することで合意したと発表した。地元メディアは、イスラエル側は人質への提供許可と引き換えに、人道支援としてガザにいるパレスチナ人に対する医薬品の搬入を増やすことを受け入れたと伝えた。
 昨年10月7日にハマスがイスラエルを奇襲して人質約240人を拉致した後、イスラエルからガザの人質に医薬品が届けられるのは初めて。地元メディアによると、ハマスは人質の居場所などを隠すために医薬品搬入を拒んできたものの、カタールの働き掛けで方針を転換させたという。医薬品は赤十字国際委員会(ICRC)を通じて運ばれる見通しだ。
 ガザでは人道危機が深刻化し、食料や清潔な飲料水、医薬品などが不足している。イスラエル軍の攻撃で多くの病院も機能不全に陥っており、住民の間では下痢感染症の流行が懸念され、健康状態が極度に悪化している。
 連れ去られてから間もなく100日となる中、高齢者を含む人質の体調や安否を懸念する声が家族らから強まっている。医薬品搬入の合意を受け、家族らの団体は「全ての人質は命を救う薬のほかに治療が必要だ」と強調。存命中とされる100人超に上るとみられる人質の早期救出を求めた。ただ、人質解放を巡るイスラエルとハマスの溝は大きく、実現への道筋は見えないままだ。 (C)時事通信社