一流に学ぶ 天皇陛下の執刀医―天野篤氏
(第15回) 大震災もひるまず執刀 =悔悟の念、吹っ切る契機に
東日本大震災が起きた2011年3月11日午後2時46分、天野氏は東京都文京区の順天堂医院で執刀中だった。手術室で当時行われていたのは僧帽弁置換術。自分の父親も3度受け、1991年の3度目に死亡した因縁の心臓手術だった。23区内の最大震度は5強。耐震構造の病院は他の建物より大きく揺れた。
「あの日のことはよく覚えています」と天野氏。手術台には患者が横たわり、スタッフたちは床にずれ落ちないよう、その体を必死に押さえた。手術はすでに始まっており、患者の胸を開き心臓を止めて、人工心肺装置につないだ後だった。
建物は最初に縦、その後は横に揺れ、手術室の無影灯は振られてブンブンと音を立てて動いていた。「あれが落ちてきたら死ぬなと思いました」と振り返る一方で、「この状況であきらめたら、おやじをあきらめたのと同じことになる。患者を絶対に助けないと駄目だぞ、と自分に言い聞かせました」と話した。
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(2017/02/27 11:46)