能登半島地震の被害が大きかった石川県内で、障害者やリスクのある高齢者ら特別に配慮が必要な避難者を受け入れる「福祉避難所」が、思うように稼働できていない。「職員も被災し、人手不足が深刻」との声が上がる一方、特別支援学校の児童生徒の家族が存在自体を知らずに車中泊するケースもあり、「周知が足りない」との指摘も出る。
 津波の被害を受けた石川県能登町。高齢者施設など5カ所が福祉避難所として指定されているが、実際に稼働しているのは2カ所にとどまる。
 その一つ、特別養護老人ホーム「第二長寿園」の施設長、橋本淳さん(71)は「家に住めない方を受け入れているが、ベッド数などの設備や人員から最大10人まで」と語る。家族1人の付き添いも必要で、現在は要配慮者6人を収容する。
 働ける職員は通常の半数以下の40人足らず。橋本さんは「20人は自宅が被災して帰れない。宿直室や面会室で寝泊まりしながら対応しており、寝不足で疲れ切っている」と訴える。
 「町は開設しているつもりでも、とにかく認知されていない」と話すのは、県内の特別支援学校に勤める女性教諭(54)だ。地震発生後、生徒の安否確認をしたところ、誰も福祉避難所を利用していないことが判明した。「利用していないどころか、そんな場所があることすら知られていなかった」と言う。
 中には、わが子に知的障害があると知られたくないため、一般の避難所を避けて自宅にとどまったり、車中泊したりする家庭もあるという。教諭は「障害のある人への理解を進め、啓発や避難訓練を通じて地域に福祉避難所の存在を知ってもらうことが大切だ」と語った。 (C)時事通信社