大腸内視鏡による大腸がん検診は大腸がんの早期発見、前がん病変(ポリープ)の発見に伴う発症および死亡リスクの低減が知られている。しかし、病変の見落としが一定の頻度で生じることから、病変発見能の向上が課題となっている。国立がん研究センター中央病院内視鏡科科長の斎藤豊氏らは1月11日、大腸がん検診受診者を対象に人工知能(AI)による病変のコンピュータ検出支援(CADe)の有効性を検討する目的で、アジア6カ国・地域による国際多施設共同非盲検並行群間比較試験NCCH2217(Project CAD)を開始すると発表した。

国内外13施設で1,400例を登録

 CADeが大腸内視鏡検査における病変発見能の向上に資するとの報告は複数あるが、日本を含めたアジアの大腸がん検診における有効性は十分に検証されていない。そこで斎藤氏らは今回、アジア人を対象にCADeを用いた大腸内視鏡検査の有効性を検討するNCCH2217を計画した。

 同試験では、アジア6カ国・地域(日本、韓国、台湾、シンガポール、香港、タイ)の13施設で2023年12月~25年12月に①大腸がん検診目的で大腸内視鏡検査を受診、②便潜血検査で陽性となり大腸内視鏡検査を受診、③50~79歳、④全身状態(ECOG PS)が0または1-に該当する者を登録(目標1,400例)。CADeを使用する大腸内視鏡検査(試験検査群)と非使用の標準検査群に1:1でランダムに割り付け、試験検査群の優越性を検証する。コントロール不良の合併症を有し検査施行が困難な者、抗血栓療法中などで大腸病変の組織診断ができない者、血便や腹痛など大腸がんが疑われる症状を有する者、大腸がんの既往歴や家族歴がある者などは除外される。

 主要評価項目は大腸腺腫の発見割合(ADR)とし、副次評価項目は内視鏡検査1件当たりの大腸腺腫発見割合(APC)、その他の病変の発見割合・個数、内視鏡検査時間、有害事象など。試験終了は2026年12月31日を予定している。

大腸がん検診の質向上にも期待

 同試験の意義について、斎藤氏らは「CADeを使用した大腸内視鏡検査の有効性が証明されれば、大腸がん検診における新たな標準検査法となりうる。アジアにおける大腸内視鏡検査の質の向上および均霑化、ひいては大腸がん検診の質の向上につながる」と期待を示している。

(小田周平)