中国・Shanghai Jiao Tong UniversityのShun Lu氏らは、Ⅱ/Ⅲ期の切除可能な非小細胞肺がん(NSCLC)患者501例を対象に、周術期におけるプラチナ製剤による化学療法への抗PD-1抗体薬toripalimab上乗せの有効性と安全性を検討する第Ⅲ相二重盲検プラセボ対照ランダム化比較試験Neotorchを実施。中間解析の結果、プラセボ群と比べtoripalimab群では、Ⅲ期NSCLC患者における無イベント生存(EFS)が有意に良好で、安全性における新たな懸念も確認されなかったと、JAMA2024; 331: 201-211)に報告した。

Ⅱ期NSCLC例を除外して解析

 Neotorch試験の対象は、中国の50施設で米国対がん合同委員会(AJCC)の病期分類第8版に基づき、切除可能なⅡ/Ⅲ期のNSCLC(非扁平上皮がんではEGFRまたはALK変異なし)と診断された患者501例。登録期間は2020年3月12日~23年6月19日で、中間解析のデータカットオフ日は2022年11月30日だった。

 対象を21日間を1サイクルとするプラチナベースの化学療法にtoripalimab240mgを上乗せする群またはプラセボ群に1:1でランダムに割り付け、術前に3サイクル、術後に1サイクル施行。その後は、toripalimab 240mgまたはプラセボのみを最大13サイクルまで投与した。

 主要評価項目は、EFS(試験責任医師による評価)と病理学的奏効〔MPR、盲検下独立病理判定(BIPR)による評価〕、副次評価項目は、全生存(OS)、病理学的完全奏効(pCR、BIPRまたは病理医による評価)、有害事象などとした。

 501例の内訳は、Ⅲ期NSCLCが404例(toripalimab群202例、プラセボ群202例)、Ⅱ期NSCLCが97例で、中間解析ではⅡ期NSCLCは除外した。404例の年齢中央値は62歳〔四分位範囲(IQR)56〜65歳〕、男性は92%で、追跡期間中央値は18.3カ月(同12.7〜22.5カ月)だった。両群の患者背景は同等で、がんの組織型は扁平上皮がんが77.7%、非扁平上皮がんが22.3%だった。

MPR率もtoripalimab群で良好

 検討の結果、EFS中央値は、プラセボ群の15.1カ月(95%CI 10.6〜21.9カ月)に対し、toripalimab群では評価不能(NE)(同24.4カ月〜NE)と有意に良好だった〔ハザード比(HR)0.40、95%CI 0.28〜0.57、P<0.001〕。

 MPR率も、プラセボ群の8.4%(95%CI 5.0〜13.1%)に対し、toripalimab群では48.5%(同41.4〜55.6%)と有意に良好だった(群間差40.2%、95%CI 32.2〜48.1%、P<0.001)。

toripalimab群の免疫関連有害事象の発現率は42.1%

 副次評価項目についても、OS中央値はプラセボ群の30.4カ月(95%CI 29.2カ月〜NE)に対しtoripalimab群ではNE(同NE〜NE)と有意差が示され(HR 0.62、95%CI 0.38〜1.00、P=0.05)、pCR率(BIPRによる評価)はプラセボ群の1.0%(95%CI 0.1〜3.5%)に対しtoripalimab群では24.8%(同19.0〜31.3%)と有意に良好だった(群間差23.7%、95%CI 17.6〜29.8%、P<0.001)。

 免疫関連有害事象の発現率は、プラセボ群の22.8%に対し、toripalimab群では42.1%と高かった。咳嗽(プラセボ群23.3%、toripalimab群34.2%)、AST値の上昇(同19.8%、31.7%)、食欲低下(同14.4%、27.7%)、発疹(同9.4%、20.3%)、甲状腺機能低下症(同3.5%、16.8%)がtoripalimab群で多く見られた。

 グレード3以上の治療関連有害事象(TEAE、プラセボ群54.0%、toripalimab群63.4%)、治療中止に至ったTEAE(同7.4%、9.4%)、致死的有害事象(同2.0%、3.0%)の発現率は両群で同等だった。

 以上を踏まえ、Lu氏らは「今回の中間解析結果は、Ⅲ期の切除可能なNSCLC患者における周術期の免疫チェックポイント阻害薬上乗せの有効性を裏付けるものである」と結論。一方で研究の限界として、術前・術後化学療法、維持療法におけるtoripalimabの寄与を個別に評価できなかった点、参加者の92%が男性だった点を挙げ、「より多くの患者集団でさらなる検討が必要である」と付言している。

(今手麻衣)