【リビウ(ウクライナ西部)時事】ロシアのミサイル攻撃で両足を失ったウクライナ人少女が、マラソン挑戦に向けて奮闘を続けている。義足の調整などのために通う西部リビウの医療・リハビリ施設には、戦争で手足を失った兵士や市民が多く集まる。障害を抱えながらも前を向く少女は、こうした人々に力を与えている。
 2022年4月、ロシア軍のミサイルが東部クラマトルスクの駅を直撃した。駅は避難列車の到着を待つ市民でごった返しており、約60人が死亡、100人以上が負傷した。
 「目の前が真っ暗になり、気が付いた時には両足から血が流れていた」。ヤナ・ステパネンコさん(12)はそう振り返る。両足の切断手術後、未来に希望を見いだせず、毎日泣いた時期もあった。だが、リビウでの約2カ月間のリハビリに耐え、義足を作るために渡米した。
 昨年夏、リビウに戻ったヤナさんはハーフマラソンへの参加を決めた。「走るための義足にまだ慣れなくて、石畳の道が怖かった」。結果は70メートル。それでも「走り終わった後は気持ちよかった」と笑顔を見せる。
 4月には米マサチューセッツ州で開かれるボストンマラソンに挑戦するつもりだ。目標は5キロに設定した。「まだ5キロを走ったことはないけど、毎日練習している」と話す。
 母ナタリアさん(45)は、2年弱の間に大きく成長した娘を頼もしげに見守る。「ヤナは意志が強くて、頑固。1日5分でよいと言われたリハビリを1時間以上やり続ける。本当に強くなった」
 前線から離れたリビウはこれまで、東・南部からの避難民500万人や負傷者3万人を受け入れており、医療施設の不足が深刻化している。市は海外から支援を受けつつ、ヤナさんが通ったリハビリ施設に学校や宿泊所、義足・義手の製作所などの増設を計画。「アンブロークン(不屈)」と名付けた一大医療拠点の整備を進めている。
 「『不屈』という名前はすごく好き」とヤナさん。将来の夢を尋ねると、少し困った表情を浮かべた。「夢はまだ分からないけど、戦争が終わり、(東部に住む)おばあちゃんに会いに行きたい」。 (C)時事通信社