中年以降、太りやすくなる「中年太り」について、名古屋大などの研究チームはラットを使った実験で、代謝や摂食をつかさどる脳の視床下部にある神経細胞の「一次繊毛(せんもう)」という部位が加齢などで短くなることが原因と突き止めた。ヒトにも同様の仕組みがあるとみられ、肥満が引き起こす疾患(肥満症)の根本治療につながると期待される。論文は7日、米科学誌セル・メタボリズムに掲載される。
 中年太りの原因として、加齢による全身の代謝低下が挙げられているが、詳しい仕組みはよく分かっていなかった。
 名古屋大の中村和弘教授らの研究チームは、視床下部の神経細胞に存在し、栄養過剰を検知して代謝を促す受容体(MC4R)に着目。MC4Rを可視化する抗体を開発してラットで調べたところ、視床下部の一部にある神経細胞からアンテナ状に伸びた一次繊毛という部位にだけ集まっていることが分かった。
 さまざまな年齢のラットで比較すると、加齢に伴って一次繊毛が徐々に短くなっていることが判明。遺伝子操作で強制的に一次繊毛を短くすると、若年でも代謝が減る一方、摂餌量が増えて「中年太り」の状態になった。また、高脂肪食で飼育すると早く短くなり、食事を制限すると短くなるペースが落ちたり、繊毛が再生したりすることも分かった。
 中村教授は「食べ過ぎていると、抗肥満の仕組みが摩耗していく。控えめの食生活、カロリーを摂取し過ぎないことを継続することで、抗肥満作用を維持したまま加齢していくことができるのではないか」と話した。 (C)時事通信社