遺伝子が関連するがん―リンチ症候群
自覚症状なくても早期から検診を
かつて「がん家系症候群」とも呼ばれた「リンチ症候群」は、生まれつきがんを発症しやすい遺伝子の変異を持つことが原因で起こる遺伝性の疾患で、大腸がん患者の2~4%を占めると考えられている。兵庫医科大学(兵庫県西宮市)外科学講座下部消化管外科の冨田尚裕主任教授に聞いた。
家族に若年発症がん患者がいる場合、自覚症状がなくても早期から定期的な診察・検査を
▽若年発症の傾向
リンチ症候群は、先天的な遺伝子の異常が原因で大腸がん、子宮体がん、卵巣がん、胃がんなどの発症リスクが高まる疾患だ。細胞は分裂する際に、DNAの遺伝情報が新たに作られる細胞のために複製されるが、複製に誤りが生じることがある。誤りが生じた場合、通常ミスマッチ修復タンパクが修復を行うが、リンチ症候群では、そのタンパクの働きをつかさどるミスマッチ修復遺伝子の働きが弱まり、誤った遺伝情報を引き継いだ細胞の複製が進み、やがてがんへと変化する。
リンチ症候群による大腸がんの場合、通常の大腸がんに比べて発症の平均年齢が40代と非常に低い傾向がある。子どもに遺伝子の異常が伝わる確率は50%と高いが、遺伝子の異常が認められてもがんを発症しないケースもある。
「リンチ症候群による大腸がんは多発することが特徴で、大腸の右側に発生しやすくなります」と冨田主任教授は説明する。
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(2019/11/09 08:00)