小児期に発症する1型糖尿病
インスリン注射で血糖値を管理(国立成育医療研究センター内分泌・代謝科 堀川玲子診療部長)
糖尿病は中高年の生活習慣病というイメージが強いが、生活習慣病とは関係なく、主に小児期に発症する「1型糖尿病」もある。自己免疫の暴走によってインスリンをつくる膵臓(すいぞう)内にある膵島のβ(ベータ)細胞が破壊され、血糖を調節できなくなる病気だ。
1型糖尿病と2型糖尿病の比較
▽20歳以下で5000人弱
ご飯やパンなどの糖質を取ると、消化されて肝臓でブドウ糖となり、血液中に入る。血液中のブドウ糖(血糖)は全身の筋肉、脳などの細胞に取り込まれ、筋肉や脳が活動する時の主なエネルギー源として利用される。血液中のブドウ糖が細胞に取り込まれる時に必要とされるホルモンがインスリンだ。胃の裏側にある膵臓のβ細胞でつくられる。
糖尿病はインスリンの量や働きが不十分なために、細胞内にブドウ糖を取り込めなくなり、余ったブドウ糖が血液中に増え、血糖値が高くなる病気だ。国立成育医療研究センター(東京都世田谷区)内分泌・代謝科の堀川玲子診療部長は「糖尿病全体の95%以上を占めるのが2型糖尿病で、食べ過ぎや運動不足が原因となり、中高年で発症することが多い。1型糖尿病の患者は全体の5%未満で、小児期に発症する患者は年間10万人当たり1.5~2.5人、20歳以下の有病者数は4600~4800人と推計されています」と言う。
▽生活に制限・支障はない
「1型糖尿病は、ウイルス感染などをきっかけに体内でつくられる抗体が、誤ってβ細胞を異物と見なし攻撃して破壊することが原因です。インスリンがつくれなくなり、血糖値が高い状態になります」と堀川部長。血液中で増えた血糖を薄めようと多くの水分が必要になり、喉が渇く、水を大量に飲む、尿量が増えるといった症状が表れる。「幼児では夜尿、学童以上になると夜間にトイレに行くようになることがあります。エネルギー不足により、元気がない、痩せるといった症状も見られます」
治療としてインスリンを外から補充するインスリン療法が必要になる。1日4~5回、腹部などに自己注射するか、携帯型ポンプを使って自動注入する。
一方、食事前や運動後、投与したインスリンが効き過ぎた時などに低血糖になることがある。これを予防するには「補食(糖質を含む軽食を食べる)も必要です」と堀川部長。血糖値を適切に管理すれば、健康な人と同じ生活ができるため、「日常生活、学業、出産などに制限はありません。このことを社会に広く理解してもらうことが大切です」と訴える。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2021/04/18 05:00)
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