黄色ブドウ球菌菌血症(Staphylococcus aureus Bacteremia;SAB)による死亡リスクをめぐっては、女性の方が高いとの報告(Clin Microbiol Infect 2017; 23: 27-32)がある一方、性差はないとするもの(Infection 2018; 46: 837-845)や、逆に男性の方が高いとするもの(Eur J Clin Microbiol Infect Dis 2018; 37: 1119-1123)もあり一貫した結論は得られていない。オランダ・Leiden University Medical CenterのAnnette C. Westgeest氏らは、SABに関連する死亡リスクの性差の有無を検討するシステマチックレビューとメタ解析を行い、結果をJAMA Netw Open(2024; 7: e240473)に報告。「SAB患者の死亡オッズ比(OR)は、女性の方が高かった」と述べている。
SAB発症後90日以内の死亡データがある報告を検索
S. aureusは細菌性血流感染による死亡の主な原因だ。SAB患者の死亡リスク上昇と関連する因子としては、高齢、感染性心内膜炎、血液透析依存、持続性感染などが知られている。
Westgeest氏らは今回、MEDLINE、PubMed、EMBASE、Web of Science Core Collectionから、①成人SAB患者を対象としたランダム化比較試験または観察研究、②対象患者が200例以上、③SAB発症後90日以内の死亡を報告している、④男女別の死亡率のデータがある―に該当する文献を検索した。研究の質およびバイアスはNewcastle-Ottawa Scaleで評価した。
未調整/調整済いずれのデータでも死亡のORは女性で上昇
最終的に89報(13万2,582例、女性37.9%、男性62.1%)を抽出。そのうち81報(10万9,828例)から得られた未調整死亡率データを解析した結果、死亡率は男性よりも女性で高かった(統合OR 1.12、95%CI 1.06~1.18)。研究間の異質性は中程度だった(Q = 130.17、P<0.001、I2 = 37%)。
患者背景や治療薬を調整した死亡率データは32報(9万5,469例)から得られ、メタ解析の結果、ここでも死亡率は男性よりも女性で高いことが示された(統合調整OR 1.18、95%CI 1.11~1.27)。大きな異質性が見られたが(Q=66.98、P<0.001、I2=51%)、影響分析の結果、いずれか1つの研究を除いても結果は変わらないこと、感度分析でも全体的な結果に変化がないことが確認された。Funnel plotでも非対称性は観察されなかった。
メカニズムの解明が今後の課題
Westgeest氏らは、①解析対象とした研究の大半で性差は主要評価項目でなかった、②報告バイアスの存在を否定できない、③異質性が存在した、④報告された性が出生時に決定された生物学上の性かジェンダーであるかは特定できない―を研究の限界と認めつつも、「SAB患者では男性よりも女性の方が死亡率が高いことが、未調整/調整後の両モデルの解析で明らかになった。背景にあるメカニズムについては今後の研究が必要だ」と結んでいる。
(木本 治)