ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬投与による主要心血管イベント(MACE)および静脈血栓塞栓症(VTE)リスクの上昇を示唆するエビデンスが増えているが、皮膚疾患の適応で包括的にリスクを検討した研究はない。オーストラリア・Prince of Wales HospitalのPatrick A. Ireland氏らは、ランダム化比較試験(RCT)のシステマチックレビューとメタ解析により、皮膚疾患へのJAK阻害薬投与におけるMACEおよびVTEリスクを評価。中央値16週間の使用で、MACEやVTEリスクが有意に上昇することはなかったとJAMA Dermatol2024年1月31日オンライン版)に報告した。

42件のRCTで使用されたJAKは15種類

 EMBASE、MEDLINE、Scopus、Cochrane Library of Registered Trials、registered Clinical Trialsに2023年6月までに収載され、皮膚疾患患者においてJAK阻害薬の全身投与とプラセボでMACE、VTE、重篤な有害事象(SAE)のリスク、忍容性を比較したRCTを抽出し、システマチックレビューとメタ解析を実施した。対象の皮膚疾患は、円形脱毛症乾癬、白斑、アトピー性皮膚炎扁平苔癬化膿性汗腺炎などだった。

 主要評価項目は、MACE〔5ポイントMACE(急性心筋梗塞脳卒中、心血管死、心不全不安定狭心症)+動脈血栓塞栓症〕およびVTE、副次評価項目はSAEおよび忍容性(治療関連有害事象による中止率で評価)とし、治療期間中の発生率と両群間のリスク比(RR)を算出した。

 組み入れ基準に合致したRCTは42件・1万7,921例(平均年齢39.89±5.52歳、平均男性比率55.65±19.04%)。1万2,996例がJAK阻害薬群、4,925例がプラセボ群に割り付けられていた。試験期間は2~52週、プラセボ対照期間におけるJAK阻害薬の投与は中央値で16週だった。最も多かった皮膚疾患はアトピー性皮膚炎(20件)、次いで乾癬(16件)。使用されたJAK阻害薬は15種類で、最も多かったのはバリシチニブ(8件)、以下アブロシチニブ(7件)、ウパダシチニブとトファシチニブ(各4件)の順だった。

長期投与に関するエビデンスは限定的

 メタ解析の結果、プラセボ群と比べJAK阻害薬群でMACE(I2=0.00%、RR 0.47、95%CI 0.28~0.80)およびVTE(I2=0.00%、同0.46、0.26~0.80)リスクの有意な上昇は認められなかった。また、薬剤ごとに層別化した解析でも、薬剤間でMACEおよびVTEのリスクは同等だった。

 JAK阻害薬群とプラセボ群で、重篤な有害事象の発生率(I2=12.38%、 RR0.92、95%CI 0.72~1.20)と投与中止の割合(I2=23.55%、同0.94、0.76~1.19)に有意差はなかった。

 Ireland氏らは、過去の研究と結果が異なる理由として、①過去の研究はリウマチ疾患や血液疾患など疾患そのものがMACEやVTEリスクの上昇と関連する患者を対象とするものが多かったこと、②皮膚疾患に対してJAK阻害薬が適応となる患者は若齢者が多いこと―などが考えられると指摘している。

 その上で同氏らは「皮膚疾患患者への短期間のJAK阻害薬投与では、心血管疾患リスクが上昇するという十分なエビデンスは示されなかった」と結論。「特に若齢の皮膚疾患への適応では、MACE・VTEリスク上昇に対する懸念を払拭する結果だが、長期使用に関するエビデンスは限定的であり、引き続き慎重な投与が求められる」と付言している。

(小路浩史)