武田薬品工業のワクチン部門トップを務めるギャリー・デュビン氏は、同社が開発したデング熱ワクチンの日本での申請に向けて当局との調整を本格化させていることを明らかにした。16日までに時事通信のインタビューに応じ、世界的な感染拡大を受けて、海外への旅行者向けに申請する方向で「当局と活発に話し合っている」と述べた。
 デング熱は、蚊が媒介する感染症で、東南アジアや中南米を中心に広がっている。感染拡大の背景には、地球温暖化や海外旅行需要の回復に伴う人流の活発化などがあるとされる。今後も、世界的な感染の拡大が見込まれるが、有効な治療法がないため、ワクチンによる予防が重要になる。
 同社のデング熱ワクチン、「QDENGA」は感染歴などの事前検査が不要な世界初のワクチンで、インドネシアやブラジル、流行国以外でもドイツや英国などで市場投入されている。
 デュビン氏は、日本の医薬品医療機器総合機構(PMDA)と協議中であることを認める一方、具体的な申請時期に関しては「臆測では言えない」と指摘した。ただ、「絶対に日本にQDENGAをもたらそうという心づもりだ」とも強調。承認取得に必要であれば、日本人を対象にした臨床試験を実施する考えを示した。
 流行国でのワクチン普及には、政府による公的予防接種プログラムへの採用が不可欠だ。デュビン氏は、「十分なワクチンを提供できるよう、製造能力の向上が重要だ」と強調。2月にはインドで新たにQDENGAを製造すると発表しており、ドイツの既存の工場と合わせ、2030年までに年1億回分の供給を目指している。 (C)時事通信社