スウェーデン・SödersjukhusetのJohannes Blom氏らは、同国の約38万例を対象にした前向きコホート研究で、便潜血検査による大腸がん検診プログラムと大腸がんによる死亡率との関連を検討。その結果、2008年のプログラム開始後5年間に初回の検診案内を早期送付した介入群では、それ以降に送付したまたは送付しなかった対照群と比べて大腸がんによる死亡率が14%有意に低下したとJAMA Netw Open(2024; 7: e240516)に報告した。
38万例を最長14年間追跡
対象は、1938~54年に出生し2008~12年にスウェーデンに在住していた37万9,448例(女性51.0%)。初回の大腸がん検診の案内を検診プログラム開始後5年間(2008~12年)に送付する介入群(20万3,670例)と、それ以降(2013~15年)に送付するまたは全く送付しない対照群(17万5,778例、うち送付なし34.2%)にランダムに割り付けた。検診案内の送付は2年に1回10年間(計5回)行うこととし、両群を他国への移住、死亡、2021年12月31日のいずれか早い時点まで追跡した(最長追跡期間14年)。
主要評価項目とした大腸がんが原死因の死亡数は、対照群の224万9,939人・年の追跡で889例に対し、介入群では219万589人・年の追跡で834例だった。追跡年数および到達年齢を調整後の解析では、対照群と比べて介入群で大腸がんによる死亡率が14%有意に低下した〔調整後の死亡率比(RR)0.86、95%CI 0.78~0.95、P<0.05〕。
大腸がんによる超過死亡者数は介入群で890.8例、対照群では975.4例と算出。対照群と比べ、介入群で大腸がんによる超過死亡リスクが16%低下していた(調整後RR 0.84、95%CI 0.75~0.93)。
FITによる受検率向上と陽性判定後の内視鏡が重要
以上の結果から、Blom氏らは「便潜血検査を用いた組織的な大腸がん検診の導入と案内により死亡率が低下する可能性が示されたことは、公衆衛生上の重要な意味を持つ」と結論。ただし、「対照群の65.8%は、検診プログラム開始後5年目以降に検診案内を少なくとも1回受けていた。また、介入群の大腸がんによる死亡例の52.2%は、最後の検診案内後2年超が経過し検診プログラムによる予防効果が低下した時点で大腸がんと診断されていた。これらが実際の大腸がん検診の有効性評価に影響した可能性がある」としている。
さらに、「早期の治癒可能な段階で大腸がんを検出できるのは検診受検者のみであるため、死亡率低下のためには受検率を高めることが重要だ。全体(2008~21年)での平均受検率は63.3%だったが、便潜血検査の方法がグアヤック法から免疫学的便潜血検査(FIT)に変更された2015年以降は70%超に向上した」と指摘。「より感度および受検率が高いFITの採用により、さらなる死亡率低下の可能性があるが、検査結果が陽性であれば速やかに大腸内視鏡検査を受けることが不可欠である」と付言している。
(太田敦子)