2本の鎖による二重のらせん構造で遺伝子を構成しているDNAは、紫外線や放射線、体内の活性酸素などにより頻繁に切断されるが、東京大の研究チームは「RAD51」と呼ばれるたんぱく質が、切断された二本鎖を修復する仕組みを解明したと発表した。修復がうまくいかないとがん化する恐れがあり、成果は発がんを抑制する治療法などの開発につながると期待される。論文は21日、英科学誌ネイチャーに掲載された。
 ヒトを含む真核動物のDNAは、芯となるたんぱく質に強固に巻き付けられた「ヌクレオソーム」という構造で細胞核内に収納されており、RAD51が切断部分の修復にかかわっていることは分かっていたが、具体的な仕組みまでは判明していなかった。
 東京大定量生命科学研究所の胡桃坂仁志教授らはたんぱく質を瞬間凍結させた上で、3次元構造を観察できるクライオ電子顕微鏡を使ってDNAの修復過程を調べた。
 その結果、RAD51はリング状の構造でヌクレオソーム上に結合しており、DNAが切断されると巻き付いている損傷部を引きはがし、修復を進めることが分かった。
 また、RAD51には、ヌクレオソームだけに結合する部位があることが判明。乳がん大腸がんなどではこの部位に変異が見つかっており、胡桃坂教授は「この部位をうまく補う手法により、治療法を開発できるかもしれない」と話している。 (C)時事通信社