米・Massachusetts General Hospital Cancer Center/Harvard Medical SchoolのAditya Bardia氏らは、転移性トリプルネガティブ乳がん(TNBC)に対する抗Trop-2抗体薬物複合体(ADC)sacituzumab govitecanの有効性と安全性を検証した第Ⅲ相試験ASCENTの最終解析を実施。医師が選択した単剤化学療法と比べ、sacituzumab govitecanでは無増悪生存(PFS)が約3カ月、全生存(OS)が約5カ月延長したとJ Clin Oncol(2024年2月29日オンライン版)に発表した。
客観的奏効率のオッズ比は11
sacituzumab govitecanは、ASCENT試験の結果に基づき米国を含む複数の国で転移性TNBCの治療薬として承認されている。日本では、今年(2024年)1月30日に製造販売承認申請が行われた。
同試験では、転移性TNBC患者529例をsacituzumab govitecan群(267例)と医師が選択した単剤化学療法を行う対照群(262例)に1:1でランダムに割り付け、許容できない毒性の発現または病勢進行を認めるまで投与した。追跡期間の中央値はsacituzumab govitecan群が11.2カ月、対照群が6.3カ月だった。
有効性の主要評価項目は脳転移がない患者におけるPFS中央値で、対照群と比べてsacituzumab govitecan群で延長が認められた。
Bardia氏らは今回、intention-to-treat(ITT)集団における副次評価項目および安全性の最終解析、Trop-2およびHER2の発現状況で層別化した事後サブグループ解析の結果を報告した。
副次評価項目の最終解析において、sacituzumab govitecan群では対照群と比べてPFS中央値(4.8カ月 vs. 1.7カ月、ハザード比0.41、95%CI 0.33~0.52)、OS中央値(11.8カ月 vs. 6.9カ月、同0.51、0.42~0.63)の延長が認められた。また、sacituzumab govitecan群では対照群と比べて客観的奏効率(ORR)が有意に高かった(31% vs. 4%、オッズ比11.0、95%CI 5.7~21.4、P<0.0001)。
PFS延長、安全性はTrop-2発現レベルを問わず一貫
Trop-2発現レベルで層別化した解析では、全てのサブグループ(四分位群)で対照群に対するsacituzumab govitecan群におけるPFS中央値の延長が一貫して認められ、OS中央値の延長傾向が認められた。HER2発現レベルで層別化した解析では、免疫組織化学染色(IHC)スコア0(71%)およびHER2低発現(29%)の両サブグループで対照群に対するsacituzumab govitecan群におけるPFSおよびOSの延長が認められた。
安全性の最終解析では、治療関連有害事象の発現状況は既報と同等で、sacituzumab govitecan群において発現率が最も高かったグレード3以上の治療関連有害事象は好中球減少症(52%)、次いで下痢(12%)、白血球減少症(11%)の順だった。治療関連死はなく、投与中止率は両群とも5%以下だった。安全性プロファイルは全てのサブグループで一貫していた。
以上の結果から、Bardia氏らは「転移性TNBC患者において、sacituzumab govitecanはTrop-2発現レベルにかかわらず単剤化学療法と比べて臨床転帰を改善し、sacituzumab govitecan投与に際してTrop-2発現の検査は不要であることが示された」と結論。「これらのデータは、sacituzumab govitecanが転移性TNBCに対するセカンドライン以降の有効な治療選択肢であることを裏付けるものだ」と述べている。
(太田敦子)