フレイルは循環器疾患や糖尿病などさまざまな疾患との関連が指摘されているが、皮膚疾患との関連についての研究報告はほとんどない。中国・First Affiliated Hospital of Xi'an Jiaotong UniversityのHao Lei氏らは乾癬研究で知られるフィンランドのFinnGen研究データベースを用いて、フレイル指数(Frailty Index;FI)と乾癬発症の因果関係をメンデルランダム化(MR)解析により検討。その結果、FIは乾癬発症と有意な正相関を示したことをSkin Res Technol(2024; 30: e13641)に報告した。なお、FIと乾癬の因果関係をMR解析で調べた研究は今回が初めて。
約40万例のゲノムワイド関連研究データを解析
乾癬の危険因子は遺伝的および環境的要因から成り、多岐にわたる。発症予防と治療においては、それらの早期発見が極めて重要とされている。FIは高齢化に伴い注目度が高まる指標で、心血管疾患患者の死亡リスクの予測などにも用いられている。また近年では、MR解析を用いて疾患とFIの因果関係を明らかにした研究が相次いで報告されている。こうした背景を踏まえ、Lei氏らはFIの乾癬発症予測因子としての有用性について、MR解析により両者の因果関係の有無を探った。
MR解析に用いる遺伝変数は、FIは英国のUK BiobankおよびスウェーデンのTwinGeneにおけるゲノムワイド関連研究(GWAS)のメタ解析(Aging Cell 2021; 20: e13459)に組み込まれた17万5,226例のデータを、乾癬はFinnGenの乾癬患者4,510例と対照21万2,242例のデータを用いた。
他の皮膚疾患との関連は認めず
まず操作変数(IV)としてFIと強い相関を示す15個の一塩基多型(SNP)を抽出し、乾癬のGWASデータセットを用いて、二標本MR解析を行った。
逆分散加重法(IVW)により、FIが高値になるほど乾癬の発症リスクが上昇する有意な正相関が認められた(β=0.916、95%CI 1.418〜4.408、P=0.002、図)。Leave-one-out法による感度分析やFunnel plotなどでも、両者の関連の信頼性を裏付けるデータが示された。
図.FIと乾癬との因果関係(MR解析)
(Skin Res Technol 2024; 30: e13641)
次に、乾癬以外に7つの皮膚疾患(アトピー性皮膚炎、扁平苔癬、全身性エリテマトーデス、痤瘡、円形脱毛症、男性型脱毛症、白斑)を対象に同様の解析を行ったが、いずれもFIとの因果関係は認められなかった。
Lei氏らは、さらにIVとして用いた15個のSNPを解析し、31個の発現量的形質遺伝子座(eQTL)を見いだした。また、そのeQTLをトランスクリプトームワイド関連解析(TWAS)することで、乾癬と密接に関連する4つの遺伝子(HLA-DQA1、HLA-DQA2、HLA-DRB、 HLA-DQB1)を明らかにした。
「ゲノム、トランスクリプトーム、プロテオームの3つのレベルで行った解析により、これらの結果はFIと乾癬の因果関係を十分に証明するものと考える」と同氏は結論。ただし、「今回用いたGWASデータベースは欧州のみを対象としており、①結果を他の地域に外挿するには不十分である、②年齢や皮膚疾患の重症度などの患者情報の詳細が不明である、③IVの選択において内的要因の完全な排除ができなかった−などの限界が存在するため、大規模な前向き研究や基礎的研究での検証が必要である」と付言している。
(編集部)