厚生労働省は16日、社会保障審議会(厚労相の諮問機関)の部会に対し、一定以上の賃金がある高齢就労者の厚生年金を減額する「在職老齢年金制度」を見直した際の効果を検証する方針を示した。労働意欲をそぐとの指摘を踏まえたもので、公的年金制度の財政検証と同時に実施し、今夏に結果を公表。来年の制度改革に向け、全面廃止や一部緩和を含めた対応について議論を本格化させる。
 在職老齢年金制度は、賃金と厚生年金の合計額が月50万円(2024年度)を超えると年金額が減らされる仕組み。21年度時点で65歳以上の受給権者の17%に当たる49万人が対象で、減らされた年金の総額は約4500億円に上る。企業で人手不足が進む中、高齢者が働き方を抑える要因になっているとの批判がある。一方で、制度の廃止や一部緩和は高所得者の優遇につながるとの意見もある。
 厚労省は年金制度のさまざまな改革を行った場合の効果を調べる「オプション試算」の項目に、在職老齢年金制度の見直し案を盛り込んだ。自営業者らが加入する国民年金(基礎年金)の保険料納付期間を現状の40年間(20~59歳)から45年間(20~64歳)へ5年間延長する案や、厚生年金に加入できるパート従業員らの対象拡大案なども検証する。 (C)時事通信社