中国・Southern Medical UniversityのYi‑Long Wu氏らは、治癒切除ALK陽性非小細胞肺がん(NSCLC)の術後補助療法としてALK阻害薬アレクチニブと化学療法を比較する第Ⅲ相非盲検ランダム化試験ALINAを実施。「アレクチニブ群では化学療法群と比べ無病生存(DFS)が著明に良好だった」とN Engl J Med(2024; 390: 1265-1276)に報告した。

アレクチニブ単剤 vs. 化学療法を比較

 NSCLCの約50%は早期または局所進行で発見され、Ⅰ~Ⅱ期例の標準治療は切除術だ。加えて術前補助療法あるいは術後補助療法が施行されることが多いが、現在切除可能なNSCLC患者に対する術後補助療法としては、プラチナベースの化学療法レジメンが推奨されている。しかし、全生存(OS)延長効果はわずか5.4%ポイントであるJ Clin Oncol 2008; 26: 3552-3559)

 NSCLCの4~5%を占めるALK陽性NSCLC患者は非陽性患者に比べ、低年齢、非喫煙の割合が多い、進行がんでの診断が多い、脳転移リスクが高いといった特徴がある。

 ALINAは、18歳以上の治癒切除ALK陽性NSCLC患者〔IB(腫瘍4cm以上)~ⅢA期〕を対象とした試験。2018年8月~21年12月に26カ国・113施設で登録した。257例をアレクチニブ群(130例)または化学療法群(127例)にランダムに割り付けた。アレクチニブは600mgを1日2回、24カ月経口投与、化学療法は、プラチナベースのレジメン(1コース21日)を4コース実施した。

 主要評価項目はDFSで、Ⅱ/ⅢA期患者を対象に階層検定を実施し、その後、intention-to-treat(ITT)集団での検定を行った。副次評価項目はOSと安全性、探索的評価項目として中枢神経系(CNS)無転移生存期間を検討した。

再発・死亡リスクが76%低下

 解析の結果、Ⅱ/ⅢA期患者の2年時点のDFSは化学療法群の63.0%に対し、アレクチニブ群で93.8%〔ハザード比(HR)0.24、95%CI 0.13~0.45、P<0.001〕、ITT集団ではそれぞれ93.6%、63.7%(同 0.24、0.13~0.43、P<0.001)と、いずれもアレクチニブ群で有意に良好だった。

 OSに関するデータはimmature(中央値に未到達)で、安全性に関する新規のシグナルは観察されなかった。

 CNS無転移生存率は化学療法群が85.8%、アレクチニブ群が98.4%(HR 0.22、95%CI 0.08~0.58、CIの多重性調整が行われていないため仮説検定は未実施)と、アレクチニブ群で良好な傾向だった。

化学療法との併用レジメンの試験も必要

 以上の結果を踏まえ、Wu氏らは「DFSは切除可能NSCLCの術後補助療法の試験における有効性の基準として確立された評価項目だ。術後再発例の大半には転移が見られ予後不良となることから、DFSの改善は患者にとって意義の高いベネフィットだ」と考察。

 さらに「ALK陽性のNSCLC患者は脳転移リスクが高いが、今回の試験では、アレクチニブ群のCNS転移は化学療法群よりも少なく、CNS無転移生存期間も延長することが示された。これは、術後補助療法としてのアレクチニブによるCNS転移の予防/遅延が可能であることを示唆するデータであり、進行NSCLCにおける同薬の頭蓋内効果に関する知見(BMC Med 2022; 20:12)と一致するものだ」と指摘。

 「今回の試験はアレクチニブ単剤とのhead-to-headでの比較を目的としたため、非盲検デザインにせざるをえなかったが、今後の試験でアレクチニブ+化学療法併用による治療強化のベネフィットも検討すべきだ」と付言している。

木本 治