オランダ・Utrecht UniversityのYujia Zhao氏らは、縦断コホート研究EPIC4PDのデータを後ろ向きに解析。コーヒー摂取とパーキンソン病(PD)リスクの低下が有意に関連すること、コーヒーの神経保護作用にカフェインおよび主要な代謝産物が関与している可能性が示されたとNeurology(2024 ; 102: e209201)に発表した(関連記事「コーヒー1日2杯以上で高血圧CVD死2倍」「コーヒーでワクチン接種者のコロナリスク増」)。
欧州6カ国・約20万人のデータを利用
複数の前向きコホート研究により、コーヒー摂取がPDリスクの低下に関連することが示唆されているものの、コーヒー摂取に関する情報は生体試料ではなく食生活質問票に基づいている。一方、カフェインまたはその代謝産物のPD進行抑制効果を検討した臨床試験では、否定的な結果が報告されている。しかし、カフェインおよび代謝産物とPD発症予防との関連を示した研究はない。
そこでZhao氏らは、コーヒー摂取量とPD診断前に測定された血中カフェインおよび代謝産物の濃度とPD発症との関連を、欧州の大規模コホート研究EPICのうち診断前危険因子とPD発症との関連を検討したサブ解析EPIC4PDのデータを用いて検討した。
欧州6カ国・約20万人のベースライン時における食生活質問票および血漿サンプルから、PDと診断される前のコーヒー摂取量を推定。血中のカフェインおよび12種類の代謝産物(パラキサンチン、テオフィリン、1,3,7-トリメチル尿酸、1-メチル尿酸など)を高分解能質量分析により定量化し、PD発症との関連を後ろ向きに評価した。
解析はEPIC4PD研究全体とネステッド症例対照研究の2部構成で、後者はPD症例群と対照群を登録時の年齢、性、研究施設、採血時の絶食状態でマッチングした。解析にはCox比例ハザードモデル、条件付きロジスティック回帰モデルを用いた。なお、血漿サンプルはPD診断時から中央値で8年目に採取されたものだった。
摂取量が最も多い群でリスクが37%減
全体解析の対象は18万4,024人で、中央値で13.1年の追跡期間中に593例がPDを発症した。コーヒーの摂取量別で四分位に分け多変量解析を行ったところ、非摂取群に対する調整後ハザード比(aHR)は最高四分位群で0.63と最も低かった(95%CI 0.46~0.88、傾向性のP=0.006)。ただしカフェインレスコーヒーの摂取にPDとの関連は認められなかった。
また、登録から中央値で8年後にPDと診断された281例に限定したサブグループ解析では、コーヒーの摂取量とPD発症リスクの低下により強い関連が認められた(最高四分位群のaHR 0.54、95%CI 0.35~0.84、傾向性のP=0.001)。
カフェインと一部の代謝産物の血中濃度がPDリスク低下と逆相関
ネステッド症例対照研究では、PDを発症した351例と条件をマッチングした351例の対照群を抽出。解析の結果、診断前のカフェイン、パラキサンチン、テオフィリン、1-メチル尿酸の血中濃度とPDリスクに逆相関が認められた。1SD増加当たりのオッズ比(OR)はそれぞれ0.80(95%CI 0.67~0.95)、0.82(同0.69~0.96)、0.78(同0.65~0.93)、0.84(同0.72~0.98)だった。喫煙習慣とアルコール摂取量を調整しても結果は変わらなかった。
以上の結果から、Zhao氏らは「大規模な縦断コホート研究の後ろ向き解析から、カフェイン含有コーヒーの摂取はPDリスクを低下させることが示された。コーヒーによる神経保護作用は摂取量に依存的であり、カフェインおよび主要な代謝産物が大きく寄与している可能性がある」と結論。PDの病因解明や予防法の開発に役立てられると、研究の意義を説明している。
(小谷明美)