厚生労働省は、市区町村の区域ごとに高齢者らを支援する民生委員の選任を巡り、対象を住民に限る要件の見直しを検討している。担い手不足に対応するためで、別の自治体から通勤する人や近隣に転居した元住民を対象に加える案を議論。6月にも有識者会議を立ち上げ、2024年度中に結論をまとめる。法改正が必要な場合、来年の通常国会への法案提出も視野に入れる。
民生委員は23年3月末時点で22万7426人。市区町村ごとに決められた定数の合計に対する「充足率」は94.5%に当たる。民生委員法が制定された1948年から90%台で推移する一方、近年は緩やかな低下傾向にある。単身の高齢者世帯などの増加を受け、ニーズは高まっており、担い手の確保が課題だ。
民生委員は、18歳以上の日本国民で、市区町村に3カ月以上居住していることが選任の条件。このため、地域の実情に詳しくても、住民でなければ民生委員になれない。
住所要件見直しは、東京都の特別区長会などが求めている。港区では、慢性的な担い手不足に悩んでいた上、民生委員を長年務めた人が近隣の自治体に転居し、活動を続けられなくなるケースが発生。保健福祉課の担当者は「転居を理由に活動ができなくなるのは地域にとって損失。貴重な人材が地域に貢献し続けられる仕組みになってほしい」と訴える。
民生委員は、厚労相が委嘱する非常勤の地方公務員。高齢者や障害者、生活困窮者らの身近な相談相手となり、支援が必要な場合に行政機関などにつなぐパイプ役を務める。 (C)時事通信社
民生委員、住民以外も検討=担い手不足で要件見直し―厚労省
(2024/05/03 12:38)