米・Lahey Hospital and Medical CenterのMartin S. Maron氏らは、閉塞性肥大型心筋症(HOCM)患者282例を対象に、経口選択的心筋ミオシン阻害薬aficamtenの有効性と安全性を検討する第Ⅲ相国際二重盲検ランダム化比較試験SEQUOIA-HCMを実施。その結果、aficamten群ではプラセボ群に比べて最大酸素摂取量が有意に増加し、運動能力が改善したN Engl J Med2024; 390: 1849-1861)に報告した。

用量反応関係が緩やかで、半減期が短いaficamten

 aficamtenは心筋収縮の亢進を緩和することで左室流出路圧較差(LVOG)を低減させる効果があるとされる。同じ心筋ミオシン阻害薬mavacamtenと比較して、aficamtenは用量反応関係が緩やかで、血中濃度半減期が2週間程度と短いという特徴がある。

 Maron氏らは今回、HOCMに対するaficamtenの有効性と安全性を検討する目的で、2022年12月〜23年12月に14ヵ国101施設でSEQUOIA-HCMを実施した。

最大酸素摂取量および副次評価項目の変化を24週間検討

 対象は18〜85歳の症候性HOCM患者で、組み入れ基準は左室駆出率(LVEF)60%以上、LVOGが安静時で30mmHg以上、バルサルバ手技後で50mmHg以上、ニューヨーク心臓協会(NYHA)心機能分類ⅡまたはⅢの心不全運動能力の低下(年齢と性別に基づく予測最大酸素摂取量が90%以下)とした。

 対象者をaficamten群(5mgで開始し、2、4、6週目に5mgずつ最大20mgまで増量)またはプラセボ群に1:1でランダムに割り付け、1日1回24週間経口投与し、心エコーの結果に基づいて用量を調節した。

 主要評価項目は、心肺運動負荷試験で評価したベースラインから24週目までの最大酸素摂取量の変化量とした。

 副次評価項目はカンザスシティ心筋症質問票・臨床サマリースコア(KCCQ-CSS)の変化量、NYHA心機能分類の改善、バルサルバ手技後のLVOGの変化量、バルサルバ手技後のLVOG 30mmHg未満の割合、中隔縮小治療の適応期間など10項目とし、事前に規定して階層的に検定した。

aficamten群で最大酸素摂取量が1.8mL/kg/分増加

 計282例の患者がランダム化され(aficamten群142例、プラセボ群140例、平均年齢59.1歳、男性59.2%)、ベースライン時の平均LVOGは55.1mmHg、平均LVEFは74.8%だった。

 aficamten群における24週時の最大酸素摂取量の平均変化は1.8mL/kg/分(95%CI 1.2~2.3mL/kg/分)と、プラセボ群(0.0mL/kg/分、同-0.5~0.5mL/kg/分)に比べて有意に運動能力を改善された(最小二乗平均群間差1.7mL/kg/分、95%CI 1.0~2.4mL/kg/分、P<0.001)。また全ての副次評価項目でも、aficamten群はプラセボ群と比較して有意に改善していた。

 24週時において、aficamten群ではKCCQ-CSSの最小二乗平均差が7ポイント(95% CI 5〜10ポイント)改善し、NYHA心機能分類において1クラス以上の改善が見られた患者の割合はaficamten群で58.5%、プラセボ群で24.3%だった。aficamten群におけるバルサルバ手技後のLVOG最小二乗平均差は-50mmHg(同-57〜-44mmHg)で、バルサルバ手技後LVOG 30mmHg未満の割合はaficamten群で49.3%、プラセボ群は3.6%だった。

 有害事象の発生率は両群で同様で、重篤な有害事象はaficamten群で8例(5.6%)、プラセボ群で13例(9.3%)報告された。投与を一時中断した有害事象は3例で、aficamten群では急性胆囊炎が1例、プラセボ群では気管支肺炎が1例と疣贅性がん摘出が1例だった。

HOCM患者におけるaficamtenの有用性を示す

 Maron氏らは今回の研究について、治療期間が比較的短かったため長期的な心血管系の転帰を評価できなかったことを限界とした上で、「HOCM患者におけるaficamtenの有用性が判明した」と述べた。

 さらに「aficamten投与によりLVEFが50%未満に低下した患者の割合は少なく、治療の中断や心不全の増悪を来した患者がいなかったのは、用量反応関係が緩やかであるためと考えられる。また、ウォッシュアウト期間後にLVOG、症状、LVEFがベースラインの値に戻ったことは、薬力学的効果の急速な消失を反映している」と付言した。

(今手麻衣)