日本医療機能評価機構は4月15日、医療事故情報収集等事業「医療安全情報No.221 カリウム製剤の投与方法間違い(第2報)」(以下、安全情報No.221)を公式サイトに掲出。塩化カリウム(KCL)製剤をプレフィルドシリンジから注射器に移し替え、急速静注するという誤った投与方法により心停止に至った事例が報告され、心肺停止状態で発見されたことについて、関係団体に確認と周知を依頼した。(関連記事「セントラルモニタへの登録忘れで心肺停止に」)
2011~14年の報告を受け、2015年に注意喚起も再発
KCL製剤の投与方法については、①希釈して使用(カリウムイオン濃度40mEq/L以下)、②緩徐に点滴静注(8mL/分以下)、③1日最大投与量(100mEq)-などの注意事項があり、不整脈や心停止のリスクがあるため急速静注は禁止されている。
日本医療機能評価機構は、KCL製剤を静脈ラインから急速静注した事例が2011年1月1日~14年11月30日に5件報告されたことを受け、2015年1月に「医療安全情報No.98 カリウム製剤の投与方法間違い」として情報提供していた。しかし今回、今年(2025年)2月28日までに再発事例が1例報告されたことで、あらためて注意喚起を行った。
事例
当該医療機関において、循環器内科医が集中治療室で治療中の患者への指示として、「カリウム補正:3.0mEq/L以下でKCL 20mEq/20mLを10mL/時で投与」と入力した。カリウム値が1.8mEq/Lであったことから、リーダー看護師と担当看護師はKCL 20mL投与の指示を確認。リーダー看護師は指示通りに原液で投与するため、定数配置薬のプレフィルドシリンジのKCL 20mLを注射器に移し替えた。その後、担当看護師に10mL/時で投与するよう伝えて注射器を渡した。担当看護師は、指示に記載された投与方法や流量を確認しておらず、中心静脈ラインから高濃度のKCL製剤を急速静注したところ、投与後に患者は心停止となった(図)。
図. 事例のイメージ
(安全情報No.221より)
プレフィルドシリンジは付属の専用注射針のみが接続可能で、三方活栓や他の注射針に直接接続できない形状であるにもかかわらず、移し替えと急速静注という人的エラーが重なったことにより今回の事例が発生した形だ。
安全情報No.221では、事例が発生した医療機関での事後の取り組みとして、①プレフィルドシリンジを使用する際は、薬液を注射器に移し替えない、②プレフィルドシリンジの剤形の目的を周知する、③KCL剤の希釈方法を医療機関内で統一し、必ず希釈して投与する-を紹介し、自施設に適した取り組みを行うよう呼びかけている。
(編集部・関根雄人)