長風呂、若者も注意
~血圧低下で意識消失(東京都市大学 早坂信哉教授)~
浴槽で溺れた65歳以上の高齢者は、2021年に約5000人に上ったことが、厚生労働省の調査で分かっている。東京都市大学人間科学部(東京都世田谷区)の早坂信哉教授は「入浴中の事故は、特に高齢者で警戒が必要です」と指摘しつつ「若い方はスマートフォンの使用などによる長風呂が原因で低血圧を起こし、事故に至るケースがあることに注意してください」と呼び掛ける。

浴室での血圧低下による事故を防ぐ方法
◇理想は40度で10分
冬場の浴室で高齢者に多い事故として知られるヒートショック。一般的に、暖房の利いた部屋から寒い浴室へ移動したときの急激な温度変化で血圧が上昇し、42度以上のような熱い湯に入ってさらに血圧が上がって、心筋梗塞や脳卒中などの危険をもたらす。
一方、湯で温まることに体が慣れてくると血管は広がり血圧は下がるが、入浴時間が長いと血圧が下がり過ぎて事故につながる恐れがあるという。「入浴は40度の湯に10分程度入るのが理想です。体温が約0.5~1度上がって血流が良くなり、冷えの改善などの入浴効果が期待できます」
長風呂をすると体温が上がり過ぎて熱中症(のぼせ)になるケースがある他、低血圧が原因で立ちくらみを起こし、転倒やけが、意識消失につながりかねない。特に注意したいのは若者だ。「スマホなどで動画を見ながら長風呂をする人は若者ほど多いです。さらに若い方はもともと血圧が低めなので、長風呂による低血圧の危険性は高まります」
◇頭を低くし湯船を出る
低血圧で立ちくらみを起こす原因として、長風呂に加え、水圧によって維持されていた血圧が一気に解放されることや、立ち上がるときに血圧が下がることもある。「この3条件が重なって血圧は低下しやすくなります。長風呂により汗をかいて脱水症状にもなるため、脳への血流量が減り、立ちくらみを起こします」
立ちくらみが出た場合は、頭の位置を下げることが重要だ。しゃがむ、洗い場で横になるなどの方法で対処する。「湯船で意識がなくなると溺れる危険性があります。頭を低くしてゆっくり洗い場に出てほしい」
予防策の一つは、入浴前にコップ1、2杯の水分を取ること。入浴中にも飲むとより良い。食後の入浴は血圧が下がりやすいため30分以上空ける、若い人であれば入浴中に冷たい水で手や顔を洗う、汗をかき始めたら風呂から上がる、湯船から出るときはゆっくり立ち上がる―なども大切だ。
「お風呂はとても健康に良い生活習慣ですが、油断すると事故を起こすこともあるので無理せず入浴してください」と早坂教授はアドバイスしている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2025/04/17 05:00)
【関連記事】