高齢者は自分の嗅覚低下に、実は気づかない? 高齢者施設での実証実験結果を発表
株式会社フィッツコーポレーション
株式会社フィッツコーポレーション(東京都港区、代表取締役:富樫 康博 以下フィッツコーポレーション)は、高齢者の嗅覚低下に関する実態調査を埼玉県上尾市に位置する高齢者施設「リハビリデイサービス アクティ」(代表者:前田伸悟)で実施しました。
実証実験の結果、高齢者の約70%の方が施設に設置したディフューザーの香りに気づけていないという実態が浮き彫りになりました。一方で、香りの感じ方に対する不調を自覚している高齢者は約20%にとどまり、嗅覚低下を自覚的に捉えている人が少ないことが分かりました。この結果を受けて、フィッツコーポレーションでは、香りで様々な社会的解決を行いたいという想いのもと、香りを嗅ぐことによる嗅覚機能の向上をサポートし、高齢者の健康機能の改善や、生活の質の向上を目指してまいります。
※本実証実験は株式会社HILUCO(代表:田代雄斗 - 人間健康科学博士)にご協力いただき実施しております。
取り組み背景
加齢に伴う嗅覚の低下
嗅覚は、視覚や聴覚と同じように加齢とともに衰えていきます。嗅覚機能は50歳代から徐々に低下し始め、男性では60歳代から、女性では70歳代から有意に低下し、80歳を超えると75%以上の方が重度の嗅覚障害を呈するとされています(1)。嗅覚障害の進行により、煙やガス漏れ、腐った食べ物を検知できないなどの危険な状況を引き起こし、個人の安全に重大なリスクをもたらす可能性があります(2)。しかしながら、一般的な健康診断には嗅覚検査の項目はなく、嗅覚機能を公的な機関で定期的に確認できる機会は乏しい状況です。
認知症と嗅覚の関連
嗅覚は様々な疾患や機能障害と深く関わっていることが明らかになってきています。特に認知機能と関連があることは以前より指摘されており、軽度認知障害と嗅覚低下との関連については、研究結果が複数発表されています。
国内外の前向きコホート研究などにおいても、嗅覚テストと認知機能障害の関連が指摘されています(3)。これは嗅覚低下が軽度認知機能障害の早期兆候である可能性を示唆しています(4)。
嗅覚と味覚の関連
味覚の大部分は嗅覚に影響されるとされており、嗅覚機能が低下することで、味覚を十分に感じられなくなる可能性があります。食事を美味しく味わうことは生活の質にも関わります。食事に対する関心が下がることで、低栄養状態やサルコペニアの一因になる可能性も指摘されています(5)。
嗅覚の可塑性、トレーニングによる改善の可能性
嗅覚機能は加齢に伴い低下する傾向にありますが、可塑性があるためトレーニングによって改善することが可能です(6)。トレーニングといっても特殊な施設で実施するようなものではなく、毎日の生活の中で香りを意識して継続的に嗅ぐことで十分に訓練することができます(7)。
問題提起
高齢者の嗅覚機能低下は、健康面にも影響を与えることは前述の通りですが、嗅覚機能の実態に関する調査は十分に進んでいません。高齢者が自身の嗅覚機能の低下を自覚的に捉える機会が少ないのも要因の一つです。このような背景を踏まえて、フィッツコーポレーションでは、高齢者のデイサービスで嗅覚機能に関する実証実験を行いました。
検証概要・結果
実験は2施設A・Bで行い、Aの施設では「空間の香りに気がついたか」を聴取しました。Bの施設では「嗅覚の不調を自覚しているか」をアンケートを用いて聴取しました。それぞれの施設での結果を踏まえると、以下のようなことが考察できます。
【結果】
施設Aでは約70%程度の人がディフューザーの香りに気がついていなかった
施設Bでは、約20%の人しか香りの感じ方に対する不調を自覚していなかった
【香りに対する現場からの声】
・花の香り、食べ物の香り、朝開く真新しい新聞の匂い。暮らしの中に香りがあることは生活にうるおいを与えると思い
ます。しかし年齢を重ねるにつれて嗅覚が鈍くなりました。嗅覚もトレーニングで回復するものなのでしょうか?
・ローズマリーとレモンによる脳トレ等のテレビを見て以来、香りを大事にしております。もし何か良い香りがあるなら
教えてください。
・小さな庭ですがバラが咲いています。庭の香りが一日の始まりで癒されます。
・柔軟剤の香りがきつくて苦手です。
考察
施設Aでは約70%の人が設置されたディフューザーの香りに気がついていないにも関わらず、施設Bでは約20%の人しか香りの感じ方に対する不調を自覚できていませんでした。
前述した「加齢による嗅覚機能の低下傾向」を考慮した上で、それぞれの施設で行った実証実験結果をふまえると、香りの感じ方に不調を自覚していない人であっても、嗅覚が低下している人が一定数いることが推測されます。
今後、高齢者が嗅覚低下を自覚的に捉えていくためにも、主観的なにおいの感じ方だけではなく、定期的な検査やチェックを通して、客観的に嗅覚の感度に関する確認を実施し、自身の嗅覚レベルの状況を把握していくことが重要であると考えています。
フィッツコーポレーションでは、今回の実証実験の結果を受けて、嗅覚機能についての研究を深めていきながら、高齢者の嗅覚低下に関する意識付けを働きかけてまいります。また、日常的に香りを嗅ぐ環境を提供し、嗅覚に関するトレーニングを行うことで、嗅覚機能を通した健康機能の改善や、生活の質の向上の糸口を探っていきます。
■実証実験の概要
施設名:アクティ上尾、アクティフィジオラボ イオンモール上尾店
実施期間:2023年10月9日(月)~10月23日(月)、2024年4月29日(月)~5月31日(金)
対象人数:延べ65名
対象者の年齢:62歳~93歳
■お問い合わせ先
この取り組みにご関心のある介護業界、医療業界、メディアの皆様からのご連絡をお待ちしております。
詳細な情報や実証実験の結果については、以下の連絡先までお問い合わせください。
お問い合わせ先:laaveen@fits-japan.com
会社概要
株式会社フィッツコーポレーション
フィッツコーポレーションは「豊かさが香るものづくり」を企業理念に、オリジナル香水・化粧品・雑貨等の製造・販売、海外ブランド香水・化粧品の輸入販売、空間向けの業務用アロマディフューザーの販売を行っております。
・設立: 1991年
・代表者: 代表取締役 富樫 康博
・所在地: 東京都港区北青山3-6-1 オーク表参道ビル 7・8F
・ウェブサイト: https://www.fits-japan.com/
株式会社ケアフォレスト
めまぐるしく進化を遂げる医療業界の中、総合病院での経験を経て地域においても質の高いリハビリを提供したいという想いから、運動療法、運動指導を行うことができる施設を設立しました。
・設立: 2004年
・代表者: 前田伸悟
・実証実験所在地: アクティ上尾(埼玉県上尾市中分1-21-2)、アクティフィジオラボ イオンモール上尾店(埼玉県上尾市愛宕3-8-1)
・ウェブサイト: http://www.acty-dayreha.jp/
参考文献
1. Watanabe, K., Yamaguchi, T., & Kawasaki, T. (1984). Study of microcirculatory disturbance in endotoxin shock using a scanning electron microscope. Microvascular Research, 28(1), 31-42. Retrieved from https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/6505700/
2. Pence, T. S., Reiter, E. R., DiNardo, L. J., & Costanzo, R. M. (2014). Risk Factors for Hazardous Events in Olfactory-Impaired Patients. JAMA Otolaryngology-Head & Neck Surgery, 140(10), 951-955. https://doi.org/10.1001/jamaoto.2014.1675
3. Liang, X., Ding, D., Zhao, Q., Guo, Q., Luo, J., Hong, Z., & the Shanghai Aging Study (SAS). (2016). Association between olfactory identification and cognitive function in community-dwelling elderly: the Shanghai aging study. BMC Neurology, 16, Article 199. https://doi.org/10.1186/s12883-016-0737-4
4. Makizako, M., Makizako, H., Doi, T., Uemura, K., Tsutsumimoto, K., Miyaguchi, H., & Shimada, H. (2014). Olfactory Identification and Cognitive Performance in Community-Dwelling Older Adults With Mild Cognitive Impairment. Chemical Senses, 39(1), 39-46. https://doi.org/10.1093/chemse/bjt052
5. Van Regemorter, V., Dollase, J., Coulie, R., Stouffs, A., Dieu, A., de Saint-Hubert, M., Mouraux, A., & Huart, C. (2022). Olfactory Dysfunction Predicts Frailty and Poor Postoperative Outcome in Older Patients Scheduled for Elective Non-Cardiac Surgery. The Journal of Nutrition, Health & Aging, 26, 981-986. https://doi.org/10.1007/s12603-022-1856-4
6. Leopold, D. A., & Hornung, D. E. (2013). Olfactory training in the treatment of smell loss. Annals of Otolaryngology, Rhinology & Laryngology, 122(8), 525-532. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23929687/
7. Tisserand Institute. (2023). Olfactory training and recovery of smell loss. Retrieved from https://tisserandinstitute.org/olfactory-training-and-recovery-of-smell-loss/
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株式会社フィッツコーポレーション(東京都港区、代表取締役:富樫 康博 以下フィッツコーポレーション)は、高齢者の嗅覚低下に関する実態調査を埼玉県上尾市に位置する高齢者施設「リハビリデイサービス アクティ」(代表者:前田伸悟)で実施しました。
実証実験の結果、高齢者の約70%の方が施設に設置したディフューザーの香りに気づけていないという実態が浮き彫りになりました。一方で、香りの感じ方に対する不調を自覚している高齢者は約20%にとどまり、嗅覚低下を自覚的に捉えている人が少ないことが分かりました。この結果を受けて、フィッツコーポレーションでは、香りで様々な社会的解決を行いたいという想いのもと、香りを嗅ぐことによる嗅覚機能の向上をサポートし、高齢者の健康機能の改善や、生活の質の向上を目指してまいります。
※本実証実験は株式会社HILUCO(代表:田代雄斗 - 人間健康科学博士)にご協力いただき実施しております。
取り組み背景
加齢に伴う嗅覚の低下
嗅覚は、視覚や聴覚と同じように加齢とともに衰えていきます。嗅覚機能は50歳代から徐々に低下し始め、男性では60歳代から、女性では70歳代から有意に低下し、80歳を超えると75%以上の方が重度の嗅覚障害を呈するとされています(1)。嗅覚障害の進行により、煙やガス漏れ、腐った食べ物を検知できないなどの危険な状況を引き起こし、個人の安全に重大なリスクをもたらす可能性があります(2)。しかしながら、一般的な健康診断には嗅覚検査の項目はなく、嗅覚機能を公的な機関で定期的に確認できる機会は乏しい状況です。
認知症と嗅覚の関連
嗅覚は様々な疾患や機能障害と深く関わっていることが明らかになってきています。特に認知機能と関連があることは以前より指摘されており、軽度認知障害と嗅覚低下との関連については、研究結果が複数発表されています。
国内外の前向きコホート研究などにおいても、嗅覚テストと認知機能障害の関連が指摘されています(3)。これは嗅覚低下が軽度認知機能障害の早期兆候である可能性を示唆しています(4)。
嗅覚と味覚の関連
味覚の大部分は嗅覚に影響されるとされており、嗅覚機能が低下することで、味覚を十分に感じられなくなる可能性があります。食事を美味しく味わうことは生活の質にも関わります。食事に対する関心が下がることで、低栄養状態やサルコペニアの一因になる可能性も指摘されています(5)。
嗅覚の可塑性、トレーニングによる改善の可能性
嗅覚機能は加齢に伴い低下する傾向にありますが、可塑性があるためトレーニングによって改善することが可能です(6)。トレーニングといっても特殊な施設で実施するようなものではなく、毎日の生活の中で香りを意識して継続的に嗅ぐことで十分に訓練することができます(7)。
問題提起
高齢者の嗅覚機能低下は、健康面にも影響を与えることは前述の通りですが、嗅覚機能の実態に関する調査は十分に進んでいません。高齢者が自身の嗅覚機能の低下を自覚的に捉える機会が少ないのも要因の一つです。このような背景を踏まえて、フィッツコーポレーションでは、高齢者のデイサービスで嗅覚機能に関する実証実験を行いました。
検証概要・結果
実験は2施設A・Bで行い、Aの施設では「空間の香りに気がついたか」を聴取しました。Bの施設では「嗅覚の不調を自覚しているか」をアンケートを用いて聴取しました。それぞれの施設での結果を踏まえると、以下のようなことが考察できます。
【結果】
施設Aでは約70%程度の人がディフューザーの香りに気がついていなかった
施設Bでは、約20%の人しか香りの感じ方に対する不調を自覚していなかった
【香りに対する現場からの声】
・花の香り、食べ物の香り、朝開く真新しい新聞の匂い。暮らしの中に香りがあることは生活にうるおいを与えると思い
ます。しかし年齢を重ねるにつれて嗅覚が鈍くなりました。嗅覚もトレーニングで回復するものなのでしょうか?
・ローズマリーとレモンによる脳トレ等のテレビを見て以来、香りを大事にしております。もし何か良い香りがあるなら
教えてください。
・小さな庭ですがバラが咲いています。庭の香りが一日の始まりで癒されます。
・柔軟剤の香りがきつくて苦手です。
考察
施設Aでは約70%の人が設置されたディフューザーの香りに気がついていないにも関わらず、施設Bでは約20%の人しか香りの感じ方に対する不調を自覚できていませんでした。
前述した「加齢による嗅覚機能の低下傾向」を考慮した上で、それぞれの施設で行った実証実験結果をふまえると、香りの感じ方に不調を自覚していない人であっても、嗅覚が低下している人が一定数いることが推測されます。
今後、高齢者が嗅覚低下を自覚的に捉えていくためにも、主観的なにおいの感じ方だけではなく、定期的な検査やチェックを通して、客観的に嗅覚の感度に関する確認を実施し、自身の嗅覚レベルの状況を把握していくことが重要であると考えています。
フィッツコーポレーションでは、今回の実証実験の結果を受けて、嗅覚機能についての研究を深めていきながら、高齢者の嗅覚低下に関する意識付けを働きかけてまいります。また、日常的に香りを嗅ぐ環境を提供し、嗅覚に関するトレーニングを行うことで、嗅覚機能を通した健康機能の改善や、生活の質の向上の糸口を探っていきます。
■実証実験の概要
施設名:アクティ上尾、アクティフィジオラボ イオンモール上尾店
実施期間:2023年10月9日(月)~10月23日(月)、2024年4月29日(月)~5月31日(金)
対象人数:延べ65名
対象者の年齢:62歳~93歳
■お問い合わせ先
この取り組みにご関心のある介護業界、医療業界、メディアの皆様からのご連絡をお待ちしております。
詳細な情報や実証実験の結果については、以下の連絡先までお問い合わせください。
お問い合わせ先:laaveen@fits-japan.com
会社概要
株式会社フィッツコーポレーション
フィッツコーポレーションは「豊かさが香るものづくり」を企業理念に、オリジナル香水・化粧品・雑貨等の製造・販売、海外ブランド香水・化粧品の輸入販売、空間向けの業務用アロマディフューザーの販売を行っております。
・設立: 1991年
・代表者: 代表取締役 富樫 康博
・所在地: 東京都港区北青山3-6-1 オーク表参道ビル 7・8F
・ウェブサイト: https://www.fits-japan.com/
株式会社ケアフォレスト
めまぐるしく進化を遂げる医療業界の中、総合病院での経験を経て地域においても質の高いリハビリを提供したいという想いから、運動療法、運動指導を行うことができる施設を設立しました。
・設立: 2004年
・代表者: 前田伸悟
・実証実験所在地: アクティ上尾(埼玉県上尾市中分1-21-2)、アクティフィジオラボ イオンモール上尾店(埼玉県上尾市愛宕3-8-1)
・ウェブサイト: http://www.acty-dayreha.jp/
参考文献
1. Watanabe, K., Yamaguchi, T., & Kawasaki, T. (1984). Study of microcirculatory disturbance in endotoxin shock using a scanning electron microscope. Microvascular Research, 28(1), 31-42. Retrieved from https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/6505700/
2. Pence, T. S., Reiter, E. R., DiNardo, L. J., & Costanzo, R. M. (2014). Risk Factors for Hazardous Events in Olfactory-Impaired Patients. JAMA Otolaryngology-Head & Neck Surgery, 140(10), 951-955. https://doi.org/10.1001/jamaoto.2014.1675
3. Liang, X., Ding, D., Zhao, Q., Guo, Q., Luo, J., Hong, Z., & the Shanghai Aging Study (SAS). (2016). Association between olfactory identification and cognitive function in community-dwelling elderly: the Shanghai aging study. BMC Neurology, 16, Article 199. https://doi.org/10.1186/s12883-016-0737-4
4. Makizako, M., Makizako, H., Doi, T., Uemura, K., Tsutsumimoto, K., Miyaguchi, H., & Shimada, H. (2014). Olfactory Identification and Cognitive Performance in Community-Dwelling Older Adults With Mild Cognitive Impairment. Chemical Senses, 39(1), 39-46. https://doi.org/10.1093/chemse/bjt052
5. Van Regemorter, V., Dollase, J., Coulie, R., Stouffs, A., Dieu, A., de Saint-Hubert, M., Mouraux, A., & Huart, C. (2022). Olfactory Dysfunction Predicts Frailty and Poor Postoperative Outcome in Older Patients Scheduled for Elective Non-Cardiac Surgery. The Journal of Nutrition, Health & Aging, 26, 981-986. https://doi.org/10.1007/s12603-022-1856-4
6. Leopold, D. A., & Hornung, D. E. (2013). Olfactory training in the treatment of smell loss. Annals of Otolaryngology, Rhinology & Laryngology, 122(8), 525-532. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23929687/
7. Tisserand Institute. (2023). Olfactory training and recovery of smell loss. Retrieved from https://tisserandinstitute.org/olfactory-training-and-recovery-of-smell-loss/
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(2024/08/05 11:00)
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