中等症以上のアトピー性皮膚炎症状のあるお子様の保護者を対象とした「小児アトピー性皮膚炎の治療実態調査」結果発表
サノフィ株式会社
約7割の保護者が子どものアトピー性皮膚炎発症に「自分のせい」、「申し訳ない」と思うことがあると回答
サノフィ株式会社(本社:東京都新宿区、代表取締役社長:岩屋孝彦)は、小学生から高校生のアトピー性皮膚炎の患者さんやその保護者の疾患に対する認識、治療実態、および分子標的薬を含む治療に対する認知や考えについて、理解を深めることを目的として、中等症以上のアトピー性皮膚炎症状を有するお子様の保護者(20代から50代、男女400名)を対象に「小児アトピー性皮膚炎の治療実態調査」を実施しました。
アトピー性皮膚炎は病態理解が進み、ここ数年で大きく治療環境が変わってきています。小児アトピー性皮膚炎治療においても、これまで小児に適応を持つ分子標的薬は限定的でしたが、2023年9月に生後6ヵ月以上に適応を有する分子標的薬が登場したのを皮切りに、患者さんに対する治療選択肢が広がり始めています。
しかし今回の調査結果で、約9割の中等症以上の小児患者さんの保護者が、小児でも使用できるアトピー性皮膚炎の原因物質を標的とした新しい治療法「分子標的薬」があることを知らないと回答しています。また、約7割がお子様のアトピー性皮膚炎の発症について「自分のせい」、「申し訳ない」と思うことがあると回答しており、症状のあるお子様だけでなく、サポートする保護者も子どものアトピー性皮膚炎に苦悩していることが明らかになりました。
アトピー性皮膚炎は、治療ゴールである長期寛解維持(良い状態を長期間に渡って維持すること)を目指せる時代となってきました。
一人ひとりの患者さんが、それぞれ最適な治療方法に巡り合い、症状がないか、あっても軽微で日常生活に支障がない状態を目指せるよう、サノフィ株式会社ではこれからもアレルギー疾患関連の総合情報サイト「アレルギーi」やLINE公式アカウント「myアトピー」を通じ、アトピー性皮膚炎の最新状況を交えた疾患啓発に努めてまいります。
主な調査結果は以下の通りです。
調査トピックス
- 子どものアトピー性皮膚炎発症について、「自分のせい」や「申し訳ない」と思っている保護者は66.8%自身にもアトピー性皮膚炎の診断歴がある場合では、88.9%が「自分のせい」、「申し訳ない」と思っている
- 子どもがアトピー性皮膚炎と診断されたときの気持ち:「やっぱりアトピー性皮膚炎だったかと思った」が67.8%で最多回答
- 中等症以上のアトピー性皮膚炎症状のある子どもの保護者でも、89.0%がアトピー性皮膚炎の原因物質を標的とした小児でも使用できる新しい治療法があることを知らない
- 治療サポートで一番大変だと感じること:子どもの年齢があがると「直接、治療に介入する大変さ」から、「治療を促す難しさ」に変化する
- 治療サポートの1日平均時間:アトピー性皮膚炎の状態が悪化しているときは44.3%が11分以上、状態が落ち着いているときでも25.2%が11分以上治療サポートに時間を充てている
調査結果を受けて、専門医からのコメント
川本典生(かわもとのりお)先生岐阜大学医学部附属病院 小児科 准教授/
岐阜大学医学部附属病院 アレルギーセンター 副センター長
2001年岐阜大学医学部医学科卒業。2008年ハーバード大学客員研究員を経て2012年より岐阜大学医学部附属病院小児科に勤務。2018年に同病院が岐阜県アレルギー疾患医療拠点病院に指定されたことで設置された中央診療施設 岐阜大学医学部附属病院アレルギーセンターの副センター長も務める。2021年より現職。
日本小児科学会、日本アレルギー学会、日本小児アレルギー学会、日本小児臨床アレルギー学会、他
アトピー性皮膚炎は、「多因子疾患」であり、遺伝的要因に加えて環境要因など多くの因子が複雑に絡み合って発症します。お子様にアトピー性皮膚炎であるとお伝えすると、「やっぱりそうですか、私もアトピー性皮膚炎だったので」などとおっしゃる事がよくあります。症状が重い患者さんの親御さんの中には、「自分のせいだ」とお考えになる方もたくさんおられます。この20年程度の間に、ガイドラインも整備され、より適切な治療が行われるようになってきていますし、さらにここ数年は小児の治療選択肢が広がり、アトピー性皮膚炎を抱える小児を取り巻く治療環境は随分改善してきていますので、その事をお話するようにしています。
アトピー性皮膚炎は慢性疾患ですので、私は、保護者の方や本人にできる限り主体的に治療に取り組んでいただけるようにしたいと考えています。最近では、薬を塗る量については理解されている方が増えてきていますが、十分に炎症が改善する前に塗るのを止めてしまうなどして、皮疹の改善が不十分なケースが多くあるように感じています。悪化した時の対応や、特に改善している皮膚の状態の見極めかたなどを出来るだけ具体的にお伝えするように努めています。
塗り薬を塗る事は、手間も時間もかかるため本人や保護者にとって、大きな負担となります。一晩中体を掻く子の手を押さえながら添い寝しているという親御さんも多くおられます。睡眠の質の低下が、患者さん自身の生活の質や学業などに様々な影響があり、また、それを見守る親御さんにとっても、仕事や家事に様々な影響があると思います。さらに、思春期に入ると、保護者が皮膚の状態を確認する事が難しくなり、治療に関わり難くなります。思春期特有の難しさがあり、お子さん自身が治療の必要性などを十分に理解していないと、治療に気持ちが向かなくなって、症状が悪化してしまう事もあります。出来るだけ早期に自分で塗る事ができるように、できれば思春期より前に自分で治療の必要性を理解し、ある程度自分でコントロールが出来るようになっておくとよいと考えています。実際には中々難しく、悪化してしまう事もありますし、既に長い間湿疹が出ている状態で過ごしてきた事により、患者さん自身が慣れてしまっている場合もあります。
現在、小児のアトピー性皮膚炎の治療環境は変化しています。皮膚の症状のしくみが解明され、治療選択肢が増えました。その結果、今まで頑張って治療に取り組んでも症状がコントロールできなかった患者さんにも、かゆみや皮疹がないつるつるの皮膚をゴールとして目指せるようになってきています。今回の調査で、9割近い保護者が新しい治療法を知らないとの事ですが、もっと広く知っていただけるとよいと思います。ご自身にあう治療方法が見つかれば、お子さんも保護者も生活の質は大きく変わると思います。ぜひ一度専門の先生に相談をしてみていただければと思います。
調査概要
- 実施時期 : 2024年6月11日(火)~2024年6月23日(日)
- 調査方法 : インターネット調査
- 調査対象 : 中等症以上のアトピー性皮膚炎症状があるお子様をもつ保護者 男女400名 (小学校低学年のお子様の保護者:100名、小学校高学年のお子様の保護者:100名、 中学生のお子様の保護者:100名、高校生のお子様の保護者:100名)
あてはまるお子様が複数の場合は通院頻度が高いお子様について回答
≪本調査における中等症以上の定義≫
- POEMスコア8点以上、もしくは医師から言われている重症度が中等症以上のいずれかを満たす場合
POEMスコア…最重症(25~28点)、重症(17~24点)、中等症(8~16点)、軽症(3~7点)、消失・またはほぼ消失(0~2点)
- 調査エリア : 全国
- 調査委託先 : 株式会社エム・シー・アイ
調査結果詳細
1.子どものアトピー性皮膚炎発症について、「自分のせい」や「申し訳ない」と思って いる保護者は66.8%。自身にもアトピー性皮膚炎の診断歴がある場合では、88.9% が「自分のせい」、「申し訳ない」と思っている
中等症以上の症状のあるお子様の保護者に、お子様のアトピー性皮膚炎の発症について、「自分のせい」や「申し訳ない」と思うことはあるかをお聞きしたところ、「思う」と回答した方は30.5%、「少し思う」と回答した方は36.3%で、約7割の保護者がお子様のアトピー性皮膚炎発症を「自分のせい」や「申し訳ない」と思っていることがわかりました。自身もアトピー性皮膚炎の診断歴のある40.5%の保護者では、「思う」と回答した方が50.0%、「少し思う」と回答した方が38.9%で、約9割が「自分のせい」や「申し訳ない」と思うことがあると回答しています。お子様のアトピー性皮膚炎が保護者にとっても苦悩となっていることがわかる結果となりました。
アトピー性皮膚炎によるお子様の将来に対する不安をお聞きしたところ、「子どもができたときにアトピー性皮膚炎が遺伝してしまうのではと不安」が47.0%で、最多回答でした。恋愛や就職への不安よりも「遺伝」への不安を大きく抱えていることがわかる結果となりました。
2.子どもがアトピー性皮膚炎と診断されたときの気持ち:「やっぱりアトピー性皮膚炎だったかと
思った」が67.8%で最多回答
お子様がアトピー性皮膚炎と診断されたときの気持ちをお聞きしたところ、「やっぱりアトピー性皮膚炎だったかと思った」と回答した方が67.8%で、「これから大変だなと思った」と回答した方の2倍以上、「原因がわかって安心した」と回答した方の3倍以上の結果でした。診断がつく前にお子様の症状をどのような疾患だと考えていたかを聞いた設問では、66.3%の方が「アトピー性皮膚炎」と考えていたと回答していることから、子どもの症状を診断がつく前からアトピー性皮膚炎と疑っていたことがわかる結果となりました。
3.中等症以上のアトピー性皮膚炎症状のある子どものいる保護者でも、89.0%がアトピー性
皮膚炎の原因物質を標的とした小児でも使用できる新しい治療法があることを知らない
はじめにさまざまな病気の治療薬で「分子標的薬」という薬があることを知っているかお聞きしたところ、「知っている」と回答した方は14.0%でした。次に分子標的薬を知っていると回答した方に、小児のアトピー性皮膚炎治療でも使用できる分子標的薬が新しい治療の選択肢としてあることを知っているかお聞きすると、23.2%の方が「知らない」と回答しました。分子標的薬を「知らない」と回答した86.0%の方と合わせると、89.0%の方がアトピー性皮膚炎の小児でも使用できる新しい治療法があることを知らないことが明らかになりました。
4.治療サポートで一番大変だと感じること:子どもの年齢があがると「直接、治療に介入する
大変さ」から、「治療を促す難しさ」に変化する
治療サポートのなかで何が一番大変だと感じるかをお聞きしたところ、小学校低学年と高学年のお子様の保護者では「毎日、ステロイド外用剤や保湿剤などの塗り薬を塗ること」が最多回答でした。中学生では、「お子様に塗り薬をきちんと塗るように注意すること」、高校生では「必要に応じて医療機関を受診させること」が最多回答になりました。お子様が小学生のときは、お子様に塗り薬を塗ってあげるために毎日時間をとることに一番大変さを感じていたのが、中学生、高校生になると、きちんと治療をしたり、医療機関を受診したりするように促すことに大変さが変化していくことがわかる結果となりました。お子様の成長とともに思春期や反抗期を迎えることで保護者のできることが変わるのは、小児アトピー性皮膚炎ならではの治療の難しさと言えるかもしれません。
5. 治療サポートの1日平均時間:アトピー性皮膚炎の状態が悪化しているときは44.3%が11分
以上、状態が落ち着いているときでも25.2%が11分以上治療サポートに時間を充てている
お子様の治療サポートについて、1日平均何分くらい時間を充てているか、アトピー性皮膚炎の状態が悪化しているときと、落ち着いているときそれぞれのケースをお聞きしたところ、どちらも「1分~10分」と回答した方が最多になりました。状態が悪化しているときでは、44.3%の方が1日11分以上、特に全体の12.5%の方は31分以上お子様の治療サポートに時間を充てていると回答しています。また状態が落ち着いているときでも25.2%の方が1日11分以上、8.7%の方が31分以上治療サポートに時間を充てていることがわかりました。
LINE公式アカウント「myアトピー」について
アトピー性皮膚炎の治療サポートを目的とした、患者さんやそのご家族が対象の疾患情報配信ツールです。手軽に正しい疾患情報を入手する機会を提供するだけでなく、医療機関と患者さんとのコミュニケーション円滑化の一助となることを期待しています。
2022年8月に運用を開始し、運用2年を経過した現在の登録患者は13万人を超えています(2024年10月現在)。
アカウント名:myアトピー
友達追加用URL:https://lin.ee/ehLKMyq
「myアトピー」友達追加用QRコード
アトピー性皮膚炎について
アトピー性皮膚炎は湿疹の一種で、発疹をはじめとする症状を伴う慢性炎症性疾患です[1,2,3,4] 。中等症から重症のアトピー性皮膚炎は、広範な発疹を特徴とし、持続する激しい難治性のかゆみ、皮膚の乾燥、亀裂、紅斑、痂皮(かひ)と毛細血管出血を伴うことがあります[5,6] 。かゆみは、アトピー性皮膚炎の患者さんにとって最も大きな負担となり、体力を消耗させることもあります。また、中等症から重症のアトピー性皮膚炎患者さんにおいては、睡眠障害、不安や抑うつ症状が現れ、生活の質(QOL)に影響を及ぼします[7] 。
アレルギーiについて
日本国内のアレルギー疾患患者さんおよびそのご家族を対象とした、サノフィが運営するアレルギー疾患関連の総合情報サイトです。アトピー性皮膚炎や気管支喘息、副鼻腔炎、花粉症などの疾患と上手に付き合うために、お役立ち情報を提供しています。
サイトURL:https://www.allergy-i.jp/kayumi/
サノフィについて
サノフィは、人々の暮らしをより良くするため、科学のもたらす奇跡を追求する、というゆるぎない使命を原動力に進み続ける革新的でグローバルなヘルスケア企業です。約100ヵ国の社員は、医療を変革し、不可能を可能に変えるため、日々研鑽に努めています。私たちは、社会的責任と持続可能性を企業の本質とし、画期的な医薬品や生命を守るワクチンを開発し、世界何百万もの人々に届けていきます。
日本法人であるサノフィ株式会社の詳細は、http://www.sanofi.co.jp をご参照ください。
1 Schneider et al, AAAI 2013, Practice Parameter Update, page 296
2 Eichenfield et al, AAD 2014, Guidelines of Care for Atopic Dermatitis, page 118
3 Guideline to treatment, European Dermatology Forum. http://www.euroderm.org/edf/index.php/edf-guidelines/category/5-guidelines-miscellaneous?download=36:guideline-treatment-of-atopic-eczema-atopic-dermatitis. Accessed December 23, 2016
4 Gelmetti and Wolleberg, BJD 2014, Atopic dermatitis- all you can do from the outside. Page 19
5 National Institutes of Health (NIH). Handout on Health: Atopic Dermatitis (A type of eczema) 2013. http://www.niams.nih.gov/ Health_Info/Atopic_Dermatitis/default.asp. Accessed October 31, 2016.
6 Mount Sinai. Patient Care Atopic Dermatitis. Available at: http://www.mountsinai.org/patient-care/health-library/diseases-and-conditions/atopic-dermatitis#risk. Accessed July 2017.
7 Zuberbier, T et al. Patient perspectives on the management of atopic dermatitis. J Allergy Clin Immunol vol. 118, pp. 226-232, 2006.
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約7割の保護者が子どものアトピー性皮膚炎発症に「自分のせい」、「申し訳ない」と思うことがあると回答
サノフィ株式会社(本社:東京都新宿区、代表取締役社長:岩屋孝彦)は、小学生から高校生のアトピー性皮膚炎の患者さんやその保護者の疾患に対する認識、治療実態、および分子標的薬を含む治療に対する認知や考えについて、理解を深めることを目的として、中等症以上のアトピー性皮膚炎症状を有するお子様の保護者(20代から50代、男女400名)を対象に「小児アトピー性皮膚炎の治療実態調査」を実施しました。
アトピー性皮膚炎は病態理解が進み、ここ数年で大きく治療環境が変わってきています。小児アトピー性皮膚炎治療においても、これまで小児に適応を持つ分子標的薬は限定的でしたが、2023年9月に生後6ヵ月以上に適応を有する分子標的薬が登場したのを皮切りに、患者さんに対する治療選択肢が広がり始めています。
しかし今回の調査結果で、約9割の中等症以上の小児患者さんの保護者が、小児でも使用できるアトピー性皮膚炎の原因物質を標的とした新しい治療法「分子標的薬」があることを知らないと回答しています。また、約7割がお子様のアトピー性皮膚炎の発症について「自分のせい」、「申し訳ない」と思うことがあると回答しており、症状のあるお子様だけでなく、サポートする保護者も子どものアトピー性皮膚炎に苦悩していることが明らかになりました。
アトピー性皮膚炎は、治療ゴールである長期寛解維持(良い状態を長期間に渡って維持すること)を目指せる時代となってきました。
一人ひとりの患者さんが、それぞれ最適な治療方法に巡り合い、症状がないか、あっても軽微で日常生活に支障がない状態を目指せるよう、サノフィ株式会社ではこれからもアレルギー疾患関連の総合情報サイト「アレルギーi」やLINE公式アカウント「myアトピー」を通じ、アトピー性皮膚炎の最新状況を交えた疾患啓発に努めてまいります。
主な調査結果は以下の通りです。
調査トピックス
- 子どものアトピー性皮膚炎発症について、「自分のせい」や「申し訳ない」と思っている保護者は66.8%自身にもアトピー性皮膚炎の診断歴がある場合では、88.9%が「自分のせい」、「申し訳ない」と思っている
- 子どもがアトピー性皮膚炎と診断されたときの気持ち:「やっぱりアトピー性皮膚炎だったかと思った」が67.8%で最多回答
- 中等症以上のアトピー性皮膚炎症状のある子どもの保護者でも、89.0%がアトピー性皮膚炎の原因物質を標的とした小児でも使用できる新しい治療法があることを知らない
- 治療サポートで一番大変だと感じること:子どもの年齢があがると「直接、治療に介入する大変さ」から、「治療を促す難しさ」に変化する
- 治療サポートの1日平均時間:アトピー性皮膚炎の状態が悪化しているときは44.3%が11分以上、状態が落ち着いているときでも25.2%が11分以上治療サポートに時間を充てている
調査結果を受けて、専門医からのコメント
川本典生(かわもとのりお)先生岐阜大学医学部附属病院 小児科 准教授/
岐阜大学医学部附属病院 アレルギーセンター 副センター長
2001年岐阜大学医学部医学科卒業。2008年ハーバード大学客員研究員を経て2012年より岐阜大学医学部附属病院小児科に勤務。2018年に同病院が岐阜県アレルギー疾患医療拠点病院に指定されたことで設置された中央診療施設 岐阜大学医学部附属病院アレルギーセンターの副センター長も務める。2021年より現職。
日本小児科学会、日本アレルギー学会、日本小児アレルギー学会、日本小児臨床アレルギー学会、他
アトピー性皮膚炎は、「多因子疾患」であり、遺伝的要因に加えて環境要因など多くの因子が複雑に絡み合って発症します。お子様にアトピー性皮膚炎であるとお伝えすると、「やっぱりそうですか、私もアトピー性皮膚炎だったので」などとおっしゃる事がよくあります。症状が重い患者さんの親御さんの中には、「自分のせいだ」とお考えになる方もたくさんおられます。この20年程度の間に、ガイドラインも整備され、より適切な治療が行われるようになってきていますし、さらにここ数年は小児の治療選択肢が広がり、アトピー性皮膚炎を抱える小児を取り巻く治療環境は随分改善してきていますので、その事をお話するようにしています。
アトピー性皮膚炎は慢性疾患ですので、私は、保護者の方や本人にできる限り主体的に治療に取り組んでいただけるようにしたいと考えています。最近では、薬を塗る量については理解されている方が増えてきていますが、十分に炎症が改善する前に塗るのを止めてしまうなどして、皮疹の改善が不十分なケースが多くあるように感じています。悪化した時の対応や、特に改善している皮膚の状態の見極めかたなどを出来るだけ具体的にお伝えするように努めています。
塗り薬を塗る事は、手間も時間もかかるため本人や保護者にとって、大きな負担となります。一晩中体を掻く子の手を押さえながら添い寝しているという親御さんも多くおられます。睡眠の質の低下が、患者さん自身の生活の質や学業などに様々な影響があり、また、それを見守る親御さんにとっても、仕事や家事に様々な影響があると思います。さらに、思春期に入ると、保護者が皮膚の状態を確認する事が難しくなり、治療に関わり難くなります。思春期特有の難しさがあり、お子さん自身が治療の必要性などを十分に理解していないと、治療に気持ちが向かなくなって、症状が悪化してしまう事もあります。出来るだけ早期に自分で塗る事ができるように、できれば思春期より前に自分で治療の必要性を理解し、ある程度自分でコントロールが出来るようになっておくとよいと考えています。実際には中々難しく、悪化してしまう事もありますし、既に長い間湿疹が出ている状態で過ごしてきた事により、患者さん自身が慣れてしまっている場合もあります。
現在、小児のアトピー性皮膚炎の治療環境は変化しています。皮膚の症状のしくみが解明され、治療選択肢が増えました。その結果、今まで頑張って治療に取り組んでも症状がコントロールできなかった患者さんにも、かゆみや皮疹がないつるつるの皮膚をゴールとして目指せるようになってきています。今回の調査で、9割近い保護者が新しい治療法を知らないとの事ですが、もっと広く知っていただけるとよいと思います。ご自身にあう治療方法が見つかれば、お子さんも保護者も生活の質は大きく変わると思います。ぜひ一度専門の先生に相談をしてみていただければと思います。
調査概要
- 実施時期 : 2024年6月11日(火)~2024年6月23日(日)
- 調査方法 : インターネット調査
- 調査対象 : 中等症以上のアトピー性皮膚炎症状があるお子様をもつ保護者 男女400名 (小学校低学年のお子様の保護者:100名、小学校高学年のお子様の保護者:100名、 中学生のお子様の保護者:100名、高校生のお子様の保護者:100名)
あてはまるお子様が複数の場合は通院頻度が高いお子様について回答
≪本調査における中等症以上の定義≫
- POEMスコア8点以上、もしくは医師から言われている重症度が中等症以上のいずれかを満たす場合
POEMスコア…最重症(25~28点)、重症(17~24点)、中等症(8~16点)、軽症(3~7点)、消失・またはほぼ消失(0~2点)
- 調査エリア : 全国
- 調査委託先 : 株式会社エム・シー・アイ
調査結果詳細
1.子どものアトピー性皮膚炎発症について、「自分のせい」や「申し訳ない」と思って いる保護者は66.8%。自身にもアトピー性皮膚炎の診断歴がある場合では、88.9% が「自分のせい」、「申し訳ない」と思っている
中等症以上の症状のあるお子様の保護者に、お子様のアトピー性皮膚炎の発症について、「自分のせい」や「申し訳ない」と思うことはあるかをお聞きしたところ、「思う」と回答した方は30.5%、「少し思う」と回答した方は36.3%で、約7割の保護者がお子様のアトピー性皮膚炎発症を「自分のせい」や「申し訳ない」と思っていることがわかりました。自身もアトピー性皮膚炎の診断歴のある40.5%の保護者では、「思う」と回答した方が50.0%、「少し思う」と回答した方が38.9%で、約9割が「自分のせい」や「申し訳ない」と思うことがあると回答しています。お子様のアトピー性皮膚炎が保護者にとっても苦悩となっていることがわかる結果となりました。
アトピー性皮膚炎によるお子様の将来に対する不安をお聞きしたところ、「子どもができたときにアトピー性皮膚炎が遺伝してしまうのではと不安」が47.0%で、最多回答でした。恋愛や就職への不安よりも「遺伝」への不安を大きく抱えていることがわかる結果となりました。
2.子どもがアトピー性皮膚炎と診断されたときの気持ち:「やっぱりアトピー性皮膚炎だったかと
思った」が67.8%で最多回答
お子様がアトピー性皮膚炎と診断されたときの気持ちをお聞きしたところ、「やっぱりアトピー性皮膚炎だったかと思った」と回答した方が67.8%で、「これから大変だなと思った」と回答した方の2倍以上、「原因がわかって安心した」と回答した方の3倍以上の結果でした。診断がつく前にお子様の症状をどのような疾患だと考えていたかを聞いた設問では、66.3%の方が「アトピー性皮膚炎」と考えていたと回答していることから、子どもの症状を診断がつく前からアトピー性皮膚炎と疑っていたことがわかる結果となりました。
3.中等症以上のアトピー性皮膚炎症状のある子どものいる保護者でも、89.0%がアトピー性
皮膚炎の原因物質を標的とした小児でも使用できる新しい治療法があることを知らない
はじめにさまざまな病気の治療薬で「分子標的薬」という薬があることを知っているかお聞きしたところ、「知っている」と回答した方は14.0%でした。次に分子標的薬を知っていると回答した方に、小児のアトピー性皮膚炎治療でも使用できる分子標的薬が新しい治療の選択肢としてあることを知っているかお聞きすると、23.2%の方が「知らない」と回答しました。分子標的薬を「知らない」と回答した86.0%の方と合わせると、89.0%の方がアトピー性皮膚炎の小児でも使用できる新しい治療法があることを知らないことが明らかになりました。
4.治療サポートで一番大変だと感じること:子どもの年齢があがると「直接、治療に介入する
大変さ」から、「治療を促す難しさ」に変化する
治療サポートのなかで何が一番大変だと感じるかをお聞きしたところ、小学校低学年と高学年のお子様の保護者では「毎日、ステロイド外用剤や保湿剤などの塗り薬を塗ること」が最多回答でした。中学生では、「お子様に塗り薬をきちんと塗るように注意すること」、高校生では「必要に応じて医療機関を受診させること」が最多回答になりました。お子様が小学生のときは、お子様に塗り薬を塗ってあげるために毎日時間をとることに一番大変さを感じていたのが、中学生、高校生になると、きちんと治療をしたり、医療機関を受診したりするように促すことに大変さが変化していくことがわかる結果となりました。お子様の成長とともに思春期や反抗期を迎えることで保護者のできることが変わるのは、小児アトピー性皮膚炎ならではの治療の難しさと言えるかもしれません。
5. 治療サポートの1日平均時間:アトピー性皮膚炎の状態が悪化しているときは44.3%が11分
以上、状態が落ち着いているときでも25.2%が11分以上治療サポートに時間を充てている
お子様の治療サポートについて、1日平均何分くらい時間を充てているか、アトピー性皮膚炎の状態が悪化しているときと、落ち着いているときそれぞれのケースをお聞きしたところ、どちらも「1分~10分」と回答した方が最多になりました。状態が悪化しているときでは、44.3%の方が1日11分以上、特に全体の12.5%の方は31分以上お子様の治療サポートに時間を充てていると回答しています。また状態が落ち着いているときでも25.2%の方が1日11分以上、8.7%の方が31分以上治療サポートに時間を充てていることがわかりました。
LINE公式アカウント「myアトピー」について
アトピー性皮膚炎の治療サポートを目的とした、患者さんやそのご家族が対象の疾患情報配信ツールです。手軽に正しい疾患情報を入手する機会を提供するだけでなく、医療機関と患者さんとのコミュニケーション円滑化の一助となることを期待しています。
2022年8月に運用を開始し、運用2年を経過した現在の登録患者は13万人を超えています(2024年10月現在)。
アカウント名:myアトピー
友達追加用URL:https://lin.ee/ehLKMyq
「myアトピー」友達追加用QRコード
アトピー性皮膚炎について
アトピー性皮膚炎は湿疹の一種で、発疹をはじめとする症状を伴う慢性炎症性疾患です[1,2,3,4] 。中等症から重症のアトピー性皮膚炎は、広範な発疹を特徴とし、持続する激しい難治性のかゆみ、皮膚の乾燥、亀裂、紅斑、痂皮(かひ)と毛細血管出血を伴うことがあります[5,6] 。かゆみは、アトピー性皮膚炎の患者さんにとって最も大きな負担となり、体力を消耗させることもあります。また、中等症から重症のアトピー性皮膚炎患者さんにおいては、睡眠障害、不安や抑うつ症状が現れ、生活の質(QOL)に影響を及ぼします[7] 。
アレルギーiについて
日本国内のアレルギー疾患患者さんおよびそのご家族を対象とした、サノフィが運営するアレルギー疾患関連の総合情報サイトです。アトピー性皮膚炎や気管支喘息、副鼻腔炎、花粉症などの疾患と上手に付き合うために、お役立ち情報を提供しています。
サイトURL:https://www.allergy-i.jp/kayumi/
サノフィについて
サノフィは、人々の暮らしをより良くするため、科学のもたらす奇跡を追求する、というゆるぎない使命を原動力に進み続ける革新的でグローバルなヘルスケア企業です。約100ヵ国の社員は、医療を変革し、不可能を可能に変えるため、日々研鑽に努めています。私たちは、社会的責任と持続可能性を企業の本質とし、画期的な医薬品や生命を守るワクチンを開発し、世界何百万もの人々に届けていきます。
日本法人であるサノフィ株式会社の詳細は、http://www.sanofi.co.jp をご参照ください。
1 Schneider et al, AAAI 2013, Practice Parameter Update, page 296
2 Eichenfield et al, AAD 2014, Guidelines of Care for Atopic Dermatitis, page 118
3 Guideline to treatment, European Dermatology Forum. http://www.euroderm.org/edf/index.php/edf-guidelines/category/5-guidelines-miscellaneous?download=36:guideline-treatment-of-atopic-eczema-atopic-dermatitis. Accessed December 23, 2016
4 Gelmetti and Wolleberg, BJD 2014, Atopic dermatitis- all you can do from the outside. Page 19
5 National Institutes of Health (NIH). Handout on Health: Atopic Dermatitis (A type of eczema) 2013. http://www.niams.nih.gov/ Health_Info/Atopic_Dermatitis/default.asp. Accessed October 31, 2016.
6 Mount Sinai. Patient Care Atopic Dermatitis. Available at: http://www.mountsinai.org/patient-care/health-library/diseases-and-conditions/atopic-dermatitis#risk. Accessed July 2017.
7 Zuberbier, T et al. Patient perspectives on the management of atopic dermatitis. J Allergy Clin Immunol vol. 118, pp. 226-232, 2006.
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(2024/11/07 14:00)
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