【ファンケル】児童期は年齢や季節によって皮膚のバリア機能が成人より低下することを確認
株式会社ファンケル
特に幼児~学童期は抗酸化機能が低下してストレスを受けやすい状態に ― 児童期の肌状態を独自の角層中タンパク質測定技術を用いて調査 ―
株式会社ファンケルは、児童期の肌状態と年齢やスキンケアの習慣による肌変化を確認するため、3歳から18歳の子どもとその親(成人)を対象に、肌の機器測定や独自の角層中タンパク質測定、アンケート調査を実施しました。 その結果、児童期は年齢や季節によってバリア機能が成人より低下していること、特に、3~12歳の幼児~学童期は抗酸化機能も低いことが分かり、酸化ストレスを受けやすいことが示唆されました。また、13~18歳では、ホルモンバランスの崩れによる皮脂量の増加だけでなく、ニキビに関わる角層中のタンパク質の指標も増加していることを見いだし、さらに発生リスクはスキンケア習慣で軽減できる可能性まで確認しましたので、それらをお知らせします。 なお、本研究結果は、第88回 日本皮膚科学会東部支部学術大会にて発表しました。
【結果報告】
1)児童期の皮膚バリア機能は年齢や季節によって成人より低下している可能性を確認
機器測定の結果、児童期は成人に比べ、年齢や季節によって頬や前腕の角層水分量や、洗顔後の回復皮脂量が低いことが分かりました。特に3~12歳の幼児~学童期は、両方の測定量がかなり低いことから、皮膚バリア機能が低下していると考えられました(図1a、b)。
また、バリア機能が低下した皮膚で高値を示す角層中のタンパク質Galactin-7(GAL7)量※1を9月と11月で比較すると、児童期は11月より9月のGAL7量が高値という結果でした(図1c)。
9月のGAL7量が高値であることから、晩夏の紫外線や気温などの季節影響が皮膚バリア機能の低下に影響する可能性が示されました。また、成人と比較すると児童期は、日常生活の中で日光暴露の影響を受けやすいことや、スキンケア習慣に乏しいことが、同様にバリア機能低下に影響する可能性があると考えられます。
2)幼児~学童期は抗酸化タンパク質が多く、酸化ストレスを受けやすい肌状態であることを確認
次に、皮膚抗酸化力について年齢と季節による違いを評価しました。皮膚抗酸化力は、機器測定では測定が難しいため、日光暴露の影響を受けて変化する角層中抗酸化タンパク質DJ-1量※2を指標として独自のタンパク質測定方法(角層バイオマーカー)を用いました。
その結果、角層中のDJ-1量は、日光暴露量が比較的多い9月の前腕において年代差が認められ、3~12歳は、13~18歳や成人に比べて有意に低値でした。つまり、3~12歳は季節的な影響で皮膚の抗酸化タンパク質が一時的に低下し、紫外線などによる酸化ダメージを受けやすい状態となっていることが示唆されました(図2)。
3)13~18歳のニキビ指標となるタンパク質とスキンケア習慣の関連性を確認
最後に、皮脂が急激に増加する13~18歳を対象に、ニキビの重症度とともに高くなる角層中のタンパク質NGAL※3の量を指標とした前述と同じ独自のタンパク質測定方法(角層バイオマーカー)を用い、洗顔や保湿ケア習慣の有無による違いを調べました。
その結果、洗顔習慣がある群では、習慣がない群と比べて角層中のNGAL量、および回復皮脂量が有意に低値でした(図3)。なお、保湿ケア習慣の有無による違いも、洗顔習慣と同様の結果でした。
これより、同じ年代でも洗顔習慣や保湿ケアの有無により角層中のNGAL量や回復皮脂量が異なり、ニキビのできやすい状態が異なることが確認されました。また、洗顔や保湿のスキンケア習慣により、皮膚状態のコントロールが可能であることが示唆されました。
4)まとめ
スキンケア習慣が乏しい児童期は、年齢や季節の影響によって皮膚のバリア機能や抗酸化機能が低下することが確認され、紫外線をはじめとする外的ストレスによる影響を受けやすい皮膚の状態であることが分かりました。
また13歳以降は、ニキビに関わる角層中のタンパク質からニキビができやすい状態であることを確認し、スキンケア習慣によって改善される可能性が考えられました。
以上のことから、これまで報告が少なかった児童期の皮膚生理機能の一部が確認され、皮膚の健康な状態を保つためには児童期からのスキンケア習慣の重要性が示唆されました。
【測定および試験概要】
実施期間 : 2023年9~11月
対象 : 3歳から18歳の健常な男女児童およびその親 計126人
方法 : 頬および前腕の角層中タンパク質の測定、各種機器測定、アンケート調査、3~7歳、8~12歳、13~18歳の年代や性別(親の年齢は不問)、スキンケア習慣などの生活習慣による群間比較
【背景・目的】
これまで成人および乳幼児を対象とした皮膚生理機能調査は多数実施され、新生児の保湿介入とアレルギーマーチの関連性や乳幼児と成人の皮膚状態の比較、学童期のアトピー性皮膚炎やニキビに関する調査が行われてきました(1-4)。しかし、学童期以降における、健常な方(非疾患者)を対象とした皮膚生理機能の調査報告は少ないのが現状です。
そこで本研究では、児童期の皮膚生理の把握を目的とし、3歳から18歳の児童男女を対象に肌調査を行い、年齢による皮膚状態変化やそれに伴うトラブルリスクの理解を試みました。
【担当者のコメント】
<用語説明>
※1 角層中のGalactin-7(GAL7)
皮膚バリア機能が低下すると角層中での発現が増加するタンパク質。これまでの当社の研究で、角層GAL7が経皮水分蒸散量の値やアトピー性皮膚炎の重症度と相関し、皮膚症状と連動も見られることを報告(5)。
※2 角層中のDJ-1
抗酸化機能や転写調節などの働きを持つ多機能タンパク質であり、全身の組織だけでなく、皮膚にも発現しています。これまでの当社の研究で、表皮細胞における紫外線障害に対してDJ-1 が保護作用を示すことや、角層におけるDJ-1量と角層の抗酸化機能が正の相関を持つことを明らかにし、DJ-1 が皮膚の酸化ストレス防御において重要な役割を果たすことを報告(6)。
※3 角層中のNGAL
NGALは、血中や尿中に存在し、炎症性疾患や細菌感染時に上昇します。皮膚では過剰な角化により発現が増加することが知られており、これまでの当社の研究で、ニキビの皮疹症状のみならず、皮疹が発生しやすいまたは悪化しやすい皮膚状態において、角層NGAL量が高い状態である可能性を報告(7)。
<引用文献>
(1) J Allergy Clin Immnol 2014; 134, 4
(2) J. Pediat Dermatol 2020; 39, 1
(3) Experimental Dermatology. 2023;32:1420-1429
(4) The Allergy in Practice 2022;42,12
(5) Int J Cosmet Scii,38,2016,1-9
(6) Arch Dermatol Res.,2015,307,925
(7) Journal of Dermatology 2018; 45: 618-621
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特に幼児~学童期は抗酸化機能が低下してストレスを受けやすい状態に ― 児童期の肌状態を独自の角層中タンパク質測定技術を用いて調査 ―
株式会社ファンケルは、児童期の肌状態と年齢やスキンケアの習慣による肌変化を確認するため、3歳から18歳の子どもとその親(成人)を対象に、肌の機器測定や独自の角層中タンパク質測定、アンケート調査を実施しました。 その結果、児童期は年齢や季節によってバリア機能が成人より低下していること、特に、3~12歳の幼児~学童期は抗酸化機能も低いことが分かり、酸化ストレスを受けやすいことが示唆されました。また、13~18歳では、ホルモンバランスの崩れによる皮脂量の増加だけでなく、ニキビに関わる角層中のタンパク質の指標も増加していることを見いだし、さらに発生リスクはスキンケア習慣で軽減できる可能性まで確認しましたので、それらをお知らせします。 なお、本研究結果は、第88回 日本皮膚科学会東部支部学術大会にて発表しました。
【結果報告】
1)児童期の皮膚バリア機能は年齢や季節によって成人より低下している可能性を確認
機器測定の結果、児童期は成人に比べ、年齢や季節によって頬や前腕の角層水分量や、洗顔後の回復皮脂量が低いことが分かりました。特に3~12歳の幼児~学童期は、両方の測定量がかなり低いことから、皮膚バリア機能が低下していると考えられました(図1a、b)。
また、バリア機能が低下した皮膚で高値を示す角層中のタンパク質Galactin-7(GAL7)量※1を9月と11月で比較すると、児童期は11月より9月のGAL7量が高値という結果でした(図1c)。
9月のGAL7量が高値であることから、晩夏の紫外線や気温などの季節影響が皮膚バリア機能の低下に影響する可能性が示されました。また、成人と比較すると児童期は、日常生活の中で日光暴露の影響を受けやすいことや、スキンケア習慣に乏しいことが、同様にバリア機能低下に影響する可能性があると考えられます。
2)幼児~学童期は抗酸化タンパク質が多く、酸化ストレスを受けやすい肌状態であることを確認
次に、皮膚抗酸化力について年齢と季節による違いを評価しました。皮膚抗酸化力は、機器測定では測定が難しいため、日光暴露の影響を受けて変化する角層中抗酸化タンパク質DJ-1量※2を指標として独自のタンパク質測定方法(角層バイオマーカー)を用いました。
その結果、角層中のDJ-1量は、日光暴露量が比較的多い9月の前腕において年代差が認められ、3~12歳は、13~18歳や成人に比べて有意に低値でした。つまり、3~12歳は季節的な影響で皮膚の抗酸化タンパク質が一時的に低下し、紫外線などによる酸化ダメージを受けやすい状態となっていることが示唆されました(図2)。
3)13~18歳のニキビ指標となるタンパク質とスキンケア習慣の関連性を確認
最後に、皮脂が急激に増加する13~18歳を対象に、ニキビの重症度とともに高くなる角層中のタンパク質NGAL※3の量を指標とした前述と同じ独自のタンパク質測定方法(角層バイオマーカー)を用い、洗顔や保湿ケア習慣の有無による違いを調べました。
その結果、洗顔習慣がある群では、習慣がない群と比べて角層中のNGAL量、および回復皮脂量が有意に低値でした(図3)。なお、保湿ケア習慣の有無による違いも、洗顔習慣と同様の結果でした。
これより、同じ年代でも洗顔習慣や保湿ケアの有無により角層中のNGAL量や回復皮脂量が異なり、ニキビのできやすい状態が異なることが確認されました。また、洗顔や保湿のスキンケア習慣により、皮膚状態のコントロールが可能であることが示唆されました。
4)まとめ
スキンケア習慣が乏しい児童期は、年齢や季節の影響によって皮膚のバリア機能や抗酸化機能が低下することが確認され、紫外線をはじめとする外的ストレスによる影響を受けやすい皮膚の状態であることが分かりました。
また13歳以降は、ニキビに関わる角層中のタンパク質からニキビができやすい状態であることを確認し、スキンケア習慣によって改善される可能性が考えられました。
以上のことから、これまで報告が少なかった児童期の皮膚生理機能の一部が確認され、皮膚の健康な状態を保つためには児童期からのスキンケア習慣の重要性が示唆されました。
【測定および試験概要】
実施期間 : 2023年9~11月
対象 : 3歳から18歳の健常な男女児童およびその親 計126人
方法 : 頬および前腕の角層中タンパク質の測定、各種機器測定、アンケート調査、3~7歳、8~12歳、13~18歳の年代や性別(親の年齢は不問)、スキンケア習慣などの生活習慣による群間比較
【背景・目的】
これまで成人および乳幼児を対象とした皮膚生理機能調査は多数実施され、新生児の保湿介入とアレルギーマーチの関連性や乳幼児と成人の皮膚状態の比較、学童期のアトピー性皮膚炎やニキビに関する調査が行われてきました(1-4)。しかし、学童期以降における、健常な方(非疾患者)を対象とした皮膚生理機能の調査報告は少ないのが現状です。
そこで本研究では、児童期の皮膚生理の把握を目的とし、3歳から18歳の児童男女を対象に肌調査を行い、年齢による皮膚状態変化やそれに伴うトラブルリスクの理解を試みました。
【担当者のコメント】
<用語説明>
※1 角層中のGalactin-7(GAL7)
皮膚バリア機能が低下すると角層中での発現が増加するタンパク質。これまでの当社の研究で、角層GAL7が経皮水分蒸散量の値やアトピー性皮膚炎の重症度と相関し、皮膚症状と連動も見られることを報告(5)。
※2 角層中のDJ-1
抗酸化機能や転写調節などの働きを持つ多機能タンパク質であり、全身の組織だけでなく、皮膚にも発現しています。これまでの当社の研究で、表皮細胞における紫外線障害に対してDJ-1 が保護作用を示すことや、角層におけるDJ-1量と角層の抗酸化機能が正の相関を持つことを明らかにし、DJ-1 が皮膚の酸化ストレス防御において重要な役割を果たすことを報告(6)。
※3 角層中のNGAL
NGALは、血中や尿中に存在し、炎症性疾患や細菌感染時に上昇します。皮膚では過剰な角化により発現が増加することが知られており、これまでの当社の研究で、ニキビの皮疹症状のみならず、皮疹が発生しやすいまたは悪化しやすい皮膚状態において、角層NGAL量が高い状態である可能性を報告(7)。
<引用文献>
(1) J Allergy Clin Immnol 2014; 134, 4
(2) J. Pediat Dermatol 2020; 39, 1
(3) Experimental Dermatology. 2023;32:1420-1429
(4) The Allergy in Practice 2022;42,12
(5) Int J Cosmet Scii,38,2016,1-9
(6) Arch Dermatol Res.,2015,307,925
(7) Journal of Dermatology 2018; 45: 618-621
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(2024/11/26 10:10)
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