特集

歯を抜かずに症状悪化
誤解が多い矯正治療

 ◇矯正への後悔

 矯正歯科医会の会員アンケートに寄ると、患者らからの相談件数が増加している。

骨から出てしまった下顎の第1小臼歯

骨から出てしまった下顎の第1小臼歯

 10代の男性「前歯が出っ歯ぎみだったため小学生の時に顎を広げる装置をつけ、高校生になりワイヤによる矯正を1年9カ月行った。しかし、口元が前に出てしまい、「矯正したことをとても後悔している。再矯正するとしたら、小臼歯の抜歯しかないのか」と強い不満を示した。

 ◇歯並びを諦める

 30代の女性は非抜歯で矯正を始めて2年ほどたった頃。医師から治療の終了を告げられた。かなりの出っ歯だったため、仕上がりには満足できなかった。しかし、「これ以上治すなら、歯をもっと削らないといけない」と言われ、歯並びについては諦めた。

 ただ、かみ合わせが合っていないことは諦められない。下顎を少し前に出してかまなければならないからだ。医師との間でこんなやりとりがあった。

 「顎の筋肉トレーニングをして下顎を前に出してかむのを当たり前にするのです」
 「私は一生、普通にかむことはできないのですか」
 「下顎を出しながらかむのが普通になります」

 このような治療は当たり前なのだろうか? 女性は大きな疑問を感じた。

上下の歯の間に隙間。3本を抜歯し治療

上下の歯の間に隙間。3本を抜歯し治療

 ◇専門医でなくても看板に掲げる

 稲毛会長は「まず抜かない、という手段ありきが最初にきていることがおかしい。第3大臼歯(親知らず)以外の永久歯の抜歯も必要なことがあることを知ってほしい」と力を込める。

 問題は、専門的なトレーニングを受けていない歯科医師に当たるケースが少なくないことだ。なぜか。歯科医師であれば誰でも、医院の看板に「矯正歯科」と記載し標榜できる。しかし、矯正歯科医会のアンケート調査によると、このことを知っている人は12・3%にすぎなかった。同医師会も、さらに周知への努力が求められている。(鈴木豊)

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