医学生のフィールド

医学生が将来像を描くための「居場所」
~Doctors' Style~

 ◇一つではない「医師の生き方」

 ――野島さんはどういうきっかけで参加されたのですか。

 野島さん 最初にDoctors’ Styleを知ったのがフェイスブックを通じてです。

 「やってほしいことがあったら、連絡ください」っていうメッセージを見て。

 その時期に、留学に興味があったので、もし、こういう先生がいたら、ぜひ紹介してくださいってメールを送ったら、海外の留学経験がある医師をゲストにして、miniの会を開いてくれたというのが最初です。

 いつ留学すればいいのか、聞きたかったので、実際に海外に行った先生からアドバイスをいただけたのは、すごく大きかったです。

 その後、東京の交流会にも参加して、同じ価値観の医学生同士の輪がどんどん広がっていくのが良かったです。

 正木医師 留学を考えている学生はたくさん集まってきます。休みが取れない私からすれば、「悩んでいるなら行ってきなよ」って、その一言なんです。

 その一言を聞いて、ぽんっと背中を押されて、「じゃあ、行ってきます」って決断した子はいっぱいいます。背中を押すっていうのが、先輩医師の役割なのかなって思っています。

幹事の野島さん

幹事の野島さん


 ――いろいろな経験を積んだ医師に会って、アドバイスをもらえるというのが大きいんですね。

 野島さん 普通の医学生の学校生活では、大学病院への進路や勤務医の生き方しか分からないっていうことが多くて。

 参加してくれるドクターの方々は、開業医やフリーランスの医師、医師をやりながら複業で全く別のことをされている方と、さまざまです。

 医師の生き方って一つじゃないんだなってことが分かり、多くの気付きを与えられます。

 大学教授に対しては、大学病院以外のキャリアとか、その先、一歩踏み込んで、生活のこととかって、すごく聞きにくいので、この会に参加することで、将来の選択肢が広がるのは魅力です。

 ◇「全然あり」と言われて

 ――学内では出会えない人たちに会える場所ですね。

 野島さん そうですね。僕は将来、救急に進みたいと思っているんですけど、体力的に救急の現場にずっと身を置くのは難しいと思っていて。

 その後、最終的には総合診療とか、在宅医療に行けたらいいなと思っています。なので、外科からではなく、内科からアプローチしたいなと思っています。

 でも、救急って、内科よりも外科的な要素が多いと思っていて、悩んでいたのです。

 ところが、前回の東京交流会の時に、救急の先生から「全然、そういうのはありだよ」って、アドバイスをいただき、不安が払拭(ふっしょく)されました。

 その後、フェイスブックでその先生からメッセージもいただき、本当に嬉しかったです。

 相談できる人に出会えて、自分が大学を卒業してから、悩み事とかを話せるような仲間づくりができるというのが大きいです。

 ――卒業後もつながっていられるってことですね。

 野島さん この会は医学生や医師にとってのサードプレイスだと思います。

 僕自身、スターバックスでバイトをしていた経験があり、スタバって顧客にサードプレイスを提供することをミッションとして掲げていますので、サードプレイスの大切さを何となく分かっていました。

 大学の友達、上司や同僚には話せないことって出てくるだろうし、そういう話ができる場所を学生の時につくっておけることがこの団体の魅力の一つです。

 医療とは関係ない友達に、愚痴を吐くとかはできるかもしれませんが、やっぱり同じ業種でしか理解し合えないことってあるじゃないですか。そういう人たちとつながれる場所です。

 ◇こういう場所だから話せる

 ――正木先生はサードプレイスということを意識されていたのですか。

 正木医師 最初は、そんなに意識していなかったんですよ。参加した学生さんたちに言われました。

 学校は授業を受けて終わってしまうことが多いので、「このテーマについて話そう」というのは難しい。

 特に、女子の場合は、キャリアや結婚について口に出すことができないわけじゃないんだけど、よっぽどのきっかけがない限り、そんな議論になりません。

 私も学生時代、女性医師の結婚に関しては気になっていたけど、同級生と話しても結論が出ないんですよね。

 誰も結婚していないし、医者ではないし。結局、違う話になってしまって終わるみたいな。

 テーマが決まっていて、そのために集まってくれば、実はこう悩んでいるとか、小さいグループで話し合うことができます。ここに来て、わざわざ学校のテストの話はしないと思うんです。

 こういう場だからこそ話せるし、自分と同じ悩みを持っている仲間が他にいる、と分かるだけでも大きな収穫。私がDoctors’ Styleを続ける意義があると思っています。(記事の内容、肩書などは取材当時のものです)

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