楽だからと放置は危険 =女性アスリートの月経不順(上)
◇骨密度低下で骨折も
月経はエストロゲンとプロゲステロンという二つの女性ホルモンの分泌で起こる。また、骨代謝といって骨は破壊と再生を常に繰り返しているが、女性ホルモンのエストロゲンは骨の破壊を抑制する役目を担っていると言われている。
国立スポーツ科学センター(JISS)が10代の女性アスリート239人を対象に行った調査によると、正常月経があるグループで疲労骨折をした人は11%だったのに対し、無月経だったグループでは38%。「無月経の状態ではエストロゲンが分泌されず、骨の破壊が抑制されないため密度の低い骨が形成され、疲労骨折を起こしやすくなるのでしょう」と鯉川准教授は分析する。
アメリカスポーツ医学会(ACSM)では、(1)利用できるエネルギーの不足(2)脳内の視床下部が原因で起こる無月経(3)骨粗しょう症―という女性アスリートが陥りやすい三つの障害を「Female Athlete Triad(FAT)=女性アスリートの三主徴(兆候)=」と規定し、放置しないよう注意を喚起している。
鯉川准教授は「月経は無いほうが楽と感じるアスリートも少なくありませんが、無月経を放置してはいけません。日本の女性アスリートが健康にスポーツを続けていくためには、スポーツ界全体でFATの知識を共有し、理解を深めていく必要があります」と警鐘を鳴らす。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
〔後半へ続く〕適切な食事とトレーニングを =女性アスリートの月経不順(下)
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(2016/12/29 16:12)