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「運動+音楽」で認知症を予防
三重の御浜、紀宝両町で定着

運動のプロが協力~幅広い展開も可能に~
「まちかどエクササイズ」

インタビューに応える佐藤正之准教授

インタビューに応える佐藤正之准教授

 三重県の御浜、紀宝両町で実験が行われた音楽と体操を組み合わせたプログラムは「まちかどエクササイズ」として実験後も両町で展開されている。このプログラムは当初、ヤマハ音楽振興会が「音楽と健康」をテーマにした高齢者向け音楽教室用ソフトとして開発を始めたが、健康に直結する運動に利用者の要望があると分かり、体操や運動のプロの協力を受けながら改良を進めた。

 ◇首から上を鍛える

 「中高年の健康には体だけでなく、首から上、頭も鍛えなくてはいけない。脳への刺激が重要だとの認識を新たにした」-。フィットネスのインストラクター、ダンス専門家、大学のスポーツ医学、運動生理学、体育学部の指導者らの助言を受ける中で、音楽を認知機能の向上に結びつけるプログラムを模索。2002年に「ヤマハウェルネスプログラム(まちかどエクササイズの原型)」が完成した。

 ヤマハの音楽教室は、多数の参加者が一度に運動するのに適した広いスペースが確保しづらい。こうした制約から広がりを欠いたが、三重大学大学院医学系研究科の佐藤正之准教授との出合いが転機になった。

 佐藤准教授は認知症、音楽療法などを研究していたが、ヤマハの音楽体操を実際に見た際、「使えると感じた」という。御浜町にある紀南病院の「ものわすれ外来」で定期的に診察していた縁もあって、隣接する紀宝町を含めた「御浜・紀宝プロジェクト」として医学的な実証実験に結びつけた。

 ◇認知機能のエビデンス

 この実験で示された、非薬物療法としての音楽体操が認知機能の向上をもたらすという結果を踏まえて、佐藤准教授は三つの考察を行っている。

 一つ目は、音楽による運動効果の増強。運動は世界保健機関(WHO)が認知症の予防で強く推奨している。「運動の効果が音楽により高まることに異存がある人は少ない」としている。

 二つ目は、認知機能訓練としての作用。音楽に合わせて体を動かすのは実は複雑なことを実践している。具体的には、テンポとリズムを分析し、これに合わせて体を動かし、その動きが楽曲に合っているかを瞬時に判断してフィードバックする。これをリアルタイムで続けるのは、複雑な課題で認知機能にも効果があるという。

 三つ目は、運動と音楽による前頭葉の活性化。体を動かすにはボディーイメージが必要で、体の位置関係は内的な空間認知。これは頭頂葉がつかさどっている。また、音楽を聴くと頭頂葉が刺激されるとの報告が多くある。伴奏がついた運動で頭頂葉が刺激、活性化される。

インタビューに応えるヤマハの小川純一主事

インタビューに応えるヤマハの小川純一主事

 佐藤准教授は「認知機能の向上に向けたエビデンス(根拠・証拠)が示された」としており、音楽体操を全国的に展開する素地が整ったと言える。

 ◇自治体に広げ、社会貢献

 ヤマハの施設で行っている「ヤマハウェルネスプログラム」はスペース的な制約などがあるが、御浜、紀宝両町で行った医学実験と同様に公共施設を活用する「まちかどエクササイズ」は、そうした課題を解消できる。インストラクターを自治体施設に配置する仕組みが有望視されている。

 音楽体操の開発を主導したヤマハの小川純一主事は「認知症予防は社会的な課題になっている。音楽体操のエビデンスが得られたことから積極的に展開することになった。自治体に広げ、社会貢献したい」と話している。


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