企画特集

「運動+音楽」で認知症を予防
三重の御浜、紀宝両町で定着

入会待ちが出る人気事業に

 音楽を聴きながら体を動かすと記憶力や知能が向上し、前頭葉の容積に拡大が見られた-。紀伊半島南部、三重県の御浜町と紀宝町で行われた医学的な実験で、音楽と組み合わせた体操により認知機能が高まるとの実験結果が示された。これを受けて両町が継続している高齢者向け音楽体操事業は入会待ちが出るほどの人気。多くの住民が認知症の予防に取り組んでいる。

 ◇5人に1人が認知症に

 高齢人口の拡大が年々進み、認知症を患っている人は昨年で約500万人、65歳以上の高齢者の7人に1人とされている。これが2025年には約700万人、5人に1人に増加するとみられている。こうした状況を踏まえて政府は共生と予防を柱とした認知症施策推進大綱を決定。また世界保健機関(WHO)は5月、予防のための初指針を公表している。

 ◇WHOが推奨

 WHO指針は12項目で構成されており、継続的な運動と禁煙が特に効果的としている。65歳以上の高齢者の場合、認知機能の低下を防ぐため中程度の有酸素運動を1週間に150分程度行うよう推奨。政府大綱も運動を奨励している。

 認知症は発症すると根本的な治療法は今のところ存在しないが、発症前ならば継続的な運動などが一定の予防効果があるとの認識が広がりつつある。そんな運動療法の一歩先を行く、「非薬物療法としての音楽つきの運動は、音楽なしの運動より、認知機能への効果が高い」ことを証明するための実験が行われた。

 ◇住民202人が参加

 実験は、神経内科の専門医として認知症診療や音楽療法などを研究していた三重大学大学院の佐藤正之准教授、ヤマハ音楽振興会(東京)、認知症対策を模索していた三重県の御浜町と紀宝町が協力し、2011年から14年にかけて2群に分け実施。65歳以上の健康な住民202人が参加し、(1)音楽体操を行う(2)体操のみを行う(3)何も行わない-三つのグループに分けて認知機能への影響を調べた。

 音楽体操グループは、ヤマハ音楽振興会が開発した運動と音楽を組み合わせたプログラムを使用。プログラムは軽快なポップ調の音楽に合わせたリズムウオークや筋力トレーニング、リズムエクササイズ、呼吸と声のトレーニングなど10項目で構成されていた。1回60分、週1回のペースで1年間継続。体操グループは同一プログラムを音楽なしでおこなった。

 ◇前頭葉の容積が増大

 1年間の実験の前後に、全般的知能(計算、作文、図解など)の検査、物語などの記憶検査、立体空間を認識する能力の検査、頭部MRI(磁気共鳴画像装置)検査などを実施し、3グループを比較。その結果、全般的知能は音楽体操のグループで「有意に向上」。記憶に関しては、音楽体操と体操のグループで「有意に向上」していた。立体空間を認識する能力に関しても、音楽体操グループで向上が見られた。佐藤准教授は「伴奏のついた体操は健常者の認知機能を高める」と分析している。

 またMRI検査により、体操、特に音楽つき体操を継続したグループで脳の前頭葉容積の増大がみられた。佐藤准教授は「老化現象で脳はやせていくもので、ものすごい結果。容積変化(増加)までは想定しておらず、良い意味でショッキングだった。音楽体操は加齢に伴う前頭葉の容積の減少を防ぐ」と話している。

新着トピックス

横浜市立大学医学部医学科同窓会 倶進会