医学部・学会情報

SGLT2阻害薬が糖尿病性腎臓病を抑制する機序を解明 ~『Cardiovascular Diabetology』に掲載~

研究の内容

今回の研究は、最近、糖尿病治療薬として高血糖改善効果だけではなく多面的な臓器保護作用についてのエビデンスも集積しつつあり臨床的に重要性が注目されているSGLT2阻害薬による臓器保護作用の本態解明を目的として、糖尿病における心血管腎臓病抑制のための重要な治療標的とされるアルブミン尿に対する改善効果とその機序について、特に血圧への影響に着目しました。

具体的には、本研究への参加についての説明のもと、文書同意が得られた、アルブミン尿を呈する2型糖尿病性腎臓病患者(85名)を対象とし、Y-AIDA研究(2型糖尿病におけるダパグリフロジンのアルブミン尿抑制効果に関する多施設共同試験: Yokohama Add-on Inhibitory efficacy of Dapagliflozin on Albuminuria in Japanese patients with type 2 diabetes study)を行い、SGLT2 阻害薬(ダパグリフロジン)の効果について、主要評価項目としてアルブミン尿への影響について検討するとともに、糖代謝指標(空腹時血糖、HbA1c)、血圧指標(診察室血圧、家庭血圧)などに与える影響についても多面的に解析しました。

その結果、SGLT2 阻害薬の24週間投与により、主要評価項目のアルブミン尿の減少が認められました。また、副次評価項目では、肥満指数(BMI)、診察室血圧、空腹時血糖、HbA1cの改善を認めました。そして、通信システムによる自動通信機能を利用しての家庭血圧測定の結果では、朝(起床後)血圧、晩(就眠前)血圧、夜間就眠中血圧、そして家庭血圧変動指標の改善が認められました。さらに重回帰分析の結果では、朝(起床後)家庭血圧の改善がSGLT2阻害薬によるアルブミン尿の抑制に関連していました。この結果は、2型糖尿病に対する糖尿病治療薬SGLT2阻害薬は、特に朝の家庭血圧の改善効果が、糖尿病性腎臓病進行の原因となるアルブミン尿を抑制する効果に関連していることを示した画期的な成果です(図: Y-AIDA研究の概要)。


医学部・学会情報